今後どうなる?
栫井:2024年初頭のピークから株価は半分くらいになってしまいましたが、要因は何なのでしょうか。
元村:基本的には、2024年に入ってから半導体業界全般が盛り上がりすぎた反動かなと思っています。特に生成AI関連などが絡んでくるとその会社のバリュエーションが跳ね上がったりしていたのでそこが一番大きいかと。
栫井:半導体はそもそも業績が上がったり下がったりのサイクルがある中で、株式市場はさらにそれを先取りしようとしますもんね。業績と株価が一致しないというか。
元村:下落の明確な理由はなく、プレーヤーの思惑が現れたというところかなと思います。
栫井:株式市場的に見れば、“利益確定売りに押されて”という話になりますかね。
足元の業績は良くなってくる傾向にあるんですよね。
元村:おそらくそうなるのではないかと思います。
これは対前年比で見た日本の半導体製造装置の販売高ですが、最近は対前年比でプラスが続いています。対前月比ではマイナスになっているところもありますが、基本的には出荷ボリュームは増えていくだろうと見られています。
栫井:もう少し長く見てこれからの半導体業界はどのようになっていくでしょうか。
元村:2030年には半導体市場が今の2倍くらいになると言われています。
東京エレクトロンはいろいろなラインナップをそろえているので、何事も無ければ市場の拡大の恩恵は受けられると思います。

出典:SEMI
もう一つは世界の半導体の工場の建設動向です。2023年には建設着工件数が一時的に減りましたが、半導体市場が2倍になるのであれば既存の工場では賄いきれないので、工場の建設も増えてくる可能性が高いと言われています。
総じて言うと、半導体業界というものは必然的に大きくなっていくだろうというのが私の見立てです。
栫井:つまりシェアさえ奪われなければ半導体市場の拡大に伴って東京エレクトロンも成長していくだろうということですね。
元村:そう考えるのが妥当だと思います。
栫井:逆に、ガンガン攻めているところはあるんですか?
元村:やはり先端品向けといったところは力を入れているのかなと思います。ワンストップで提供できる優位性は先端品になればなるほど強くなっていくので、そこに研究開発を注力しています。
あとは環境対応ですね。大量の水なんかも使いますし、劇薬みたいなものも使うので、それをいかに自然に優しい感じで還元するかというところにも注力しています。
栫井:以前、SCREENについて取り上げた時に、半導体洗浄装置の分野でSCREENがシェアを落としていて代わりに東京エレクトロンがシェアを上げているという話がありましたが、そういう動きが各所で行われているのかなと思えますね。
元村:洗浄装置の中でも、SCREENの方が優れている技術領域と東京エレクトロンの方が優れている技術領域があるようで、顧客企業がどちらを採用するかという話になりますが、東京エレクトロンはワンストップで行えるという強みがあるので、もしかしたらそうやってシェアを奪っていっているということもあるかもしれません。
栫井:これは想像の範囲ですけど、日本の企業をM&Aすることももしかしたらあるのではないでしょうか。
元村:ビジネス的に考えるとそういう選択肢もあると思います。独占禁止法の兼ね合いもありますが、技術力を持った小さい会社をM&Aしたりもしているようです。
栫井:東京エレクトロンは長期的に見て問題なさそうでしょうか。
元村:むしろ今の株価はかなり魅力的に見えますね。
栫井:一時期はバブル的に上がった局面もあったと思いますが、それからすると半値でPERは21倍、そして業績自体は盛り返してくるだろうというところで、それだけ考えるとお得感があるという印象ですね。
元村:そうですね、だいぶ良い頃合いだと思います。
栫井:あとは世界の景気動向が半導体に影響を与えることもあるでしょうし、中国リスクなどもあります。そのあたりは注視する必要はあると思いますが、人々がスマホやAIを使っていくという事実はなかなか揺るがないと思うので、その方向性があれば、短期的にはいろいろあったとしても半導体の魅力は色あせないというところですね。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年9月16日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。