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三井住友銀行、従業員の副業解禁へ。優秀な人材の流出を防ぐ引き留め策の一環も利用者の間で依然根強い「絶対不正する奴が出てくる」との疑心暗鬼

三井住友銀行が約3万人の全従業員を対象に、この10月から社外での副業を解禁すると伝えたニュースが波紋を呼んでいるようだ。

報道によれば、副業の内容としてはスポーツ指導者や語学講師、外部企業で短時間勤務するといったケースなどを想定しており、社外での業務を通じて人脈や価値観の幅を広げてもらい、組織の活性化や多様性の向上につなげる狙いがあるとのこと。

副業の1か月当たりの就業時間は20時間までとし、本業に支障が出ないことや本業と競合しないことなどが条件で、個人事業や業務委託のほか、雇用契約を結んだ働き方も可能にするという。

公務員の世界にも広がる副業解禁

働き方の多様化や人材の流動化を目指して国も積極的に推奨するなど、最近ではかなり広まっている感もあるサラリーマンの副業や兼業。

ちなみに、農業などの家業を除き原則的に副業などが禁止とされ、こっそりと働いていた職員がバレて懲戒処分……といった報道を定期的に見かける公務員に関しても、最近では社会貢献に繋がる公益性の高い仕事であったり、観光業など地域振興に繋がる仕事といった縛りはあるものの、副業を認めつつあるといった流れがあるようだ。

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そんななかで銀行業界では、2018年に当時の新生銀行が大手銀行では初めて、行員の兼業・副業を認めたのを皮切りに、またメガバンクでは2019年にみずほフィナンシャルグループが副業解禁に踏み切ることに。

とかく保守的だといわれる銀行でも、このように副業を認めるところは増えており、今回の三井住友銀行の件も、そんな時代の流れに沿ったものだといったところ。

ただ、そうはいっても銀行といえば多くの顧客の大事な資産を扱い、企業や個人などの機密情報にも触れる機会が多いため、リスク管理を徹底するためにも、副業解禁には慎重になるべきだといった意見があるのも事実。

今回の三井住友銀行における副業解禁でも、やはり「業務上で知りえた個人情報を悪用する奴が絶対に出てくる」といった推測があがっているところで、さらには副業でメリットのある顧客に対し、本業の銀行業務で便宜を図るといった事例が現れるのではないか……といった声もあるなど、コンプライアンス面での弊害が大いに考えられる、といった見方は依然として根強いようだ。

優秀な若手人材の引き留めに躍起な銀行業界

いっぽうで、今回の三井住友銀行における副業解禁の報道に対する反応として多いのが、“今後のさらなるリストラのため”といった見方。

一度就職してしまえば一生安泰というのはすでに過去の話で、近年はAIやフィンテックの普及でさほど人手が要らなくなったこともあり、ここ数年で大規模な人員削減や支店などの統廃合が進んだ銀行業界。

三井住友フィナンシャルグループにおいても、19年度末からの3年間で従業員を7000人減らし、今後も業務のデジタル化と事務効率化を進めることで、2025年度までの3年間でベース経費1300億円、業務量7000人分の削減を目指す方針。こういった流れのなかで、今後波風を極力立てずに余剰人員の削減や給与を抑えていくために、あらかじめ社員に対し副業を推奨しているのでは……というのだ。

ただ銀行業界といえば、人員の整理を積極的に進めている反面で、このところは優秀な人材の他行、あるいは他業種への流出にも悩まされている状況。そんななかで三井住友銀行は今年6月に、従来までのいわゆる“年功序列”を廃止するなどといった、新たな人事制度を2年後をめどに導入すると公表

実績によっては20代でも年収2,000万円も可能で、またデジタル部門など専門分野の人材には年収5,000万円前後の提示も……といった話も出ているこの新人事制度。これはひとえに、若手を中心とした優秀な人材にそれに見合った報酬を与える仕組みに変えることで、他社・他業種へ流れることを防ぎたいといったものだが、今回の副業解禁に関しても、そんな有能な人材の引き留め策の一環であるという意味合いが色濃いようである。

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