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日本、7人に1人が貧困に。米国型経営を真似て格差拡大、経済長期低迷へ=斎藤満

米国流「改革」があだに

その象徴的な出来事が、1994年2月に千葉県浦安市舞浜で開かれた経済同友会の会議にみられました。

ここで新日本製鉄社長の今井敬氏が雇用重視の「日本型経営」重視を主張。これに対して、オリックス社長の宮内義彦氏が「株主重視」の米国型経営に転換すべきと主張。激しい論争となりました。

これがいわゆる「今井・宮内論争」と言われるものです。

結局、日本は宮内氏の考えを採用、日本型経営を捨て、その後米国型の経営にかじを切りました。大きな変化は雇用形態に表れ、それまでの年功序列、終身雇用型が崩れ、中途採用、非正規雇用の拡大へと進み、企業にとって「固定費」とされた人件費を「変動費」化し、コストの弾力的な削減を可能にし、短期収益拡大に道を開きました。

その一方で労働者には「わが社」という帰属意識が後退、会社に対するロイヤルティ(忠誠心)も低下し、社内教育が後退、労働生産性の足かせにもなりました。

当時、米国帰りのエコノミストは日本型経営を「非効率」と決めつけ、米国型短期収益追求に変えましたが、後に米国の研究者から日本型経営を評価する論文も出るなど、むしろ米国から日本型経営の良さを再評価する声が上がりました。

7人に1人が貧困の制約

日本が米国流の企業重視、金融利益重視の政策に傾く中で、金融緩和が長期化し、これによる株高、円安が所得分配に大きな偏りをもたらしました。

労働者の4割近くが非正規雇用となり、国税庁のデータによると彼らの年収は200万円前後で、そこから家賃と社会保険料を引かれると、食費の確保が精いっぱいで、結婚や子育てどころではなくなります。

その一方で企業は最高益を更新し続け、資産価格の上昇で資産家、富裕層がますます富むことになります。その結果、米国と同様に日本でも所得格差が拡大。日本財団の調査によると、日本の相対貧困率は1985年の10.9%から2019年には13.5%と、7人に1人が「貧困」状態となりました。

2010年のOECDのfactbookによると、日本の相対貧困率は15%で、これは加盟国のうち、メキシコ、トルコ、米国に次いで4番目に高い数字となっています。デンマークの5%とは大違いです。中間層が消滅し、富裕層と貧困層に二分される中で、日本の個人消費は低迷し、最近ではこれに物価高が重なって、格差と物価高が消費や経済を圧迫するようになっています。

大学改革にも失敗しました。2004年に大学の自主性を高めるという名目で大学の法人化を進めました。国の補助金は減り、大学教授は研究費の捻出のためにアルバイトを余儀なくされ、若手研究員が減りました。国の補助が減ったので大学は授業料を引き上げたので、貧しい学生には大学が遠くなりました。富裕家庭でないと東大を目指せなくなりました。

特に基礎物理の研究が敬遠され、日本の物理化学の根幹が弱ってきました。世界の大学ランキングに日本の大学が上位に入れなくなって久しくなりました。

Next: 消えた中間層。そろそろ日本経済をリセットするとき

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