いま注目されている三菱重工<7011>について、直近の決算内容や好調の背景、そして今後の見通しを詳しく解説したいと思います。投資をご検討の方だけでなく、同社のビジネスに興味がある方も、ぜひ最後までお読みください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
直近の決算ハイライト:すべての指標がプラス!
直近で発表された三菱重工の決算は非常に好調です。
- 受注高: 2024年度(2025年3月期)は2023年度比で6%プラス
- 売上収益: 8%プラス
- 事業利益(営業利益): 非常に大きく増え、36%プラス
- 当期利益: 11%プラス
この通り、主要な損益計算書の指標はすべてプラスとなっており、業績の好調ぶりが伺えます。
三菱重工の好調な業績は、実は最近始まったものではなく、以前から続いています。
コロナ禍やMRJ(三菱リージョナルジェット)の開発中止といった出来事があった2022年3月期には、大きく赤字を計上していました。しかし、その後は一気に業績が回復。2023年から2024年度(2025年3月期)にかけて、業績は力強く伸びてきています。

三菱重工業<7011> 週足(SBI証券提供)
なぜこんなに好調なのか?2つの牽引役
三菱重工の好調を支える主な要因は2つあります。
- ガスタービン事業(GTCC)の絶好調
- 防衛関連事業の拡大
それぞれ詳しく見ていきましょう。
<牽引役その1:世界一の技術を誇るガスタービン事業>
特に業績に貢献しているのが、ガスタービン事業(GTCC:ガスタービン・コンバインドサイクル)です。三菱重工のガスタービンは、世界一の技術を持っていると言われています。
このガスタービンの需要が非常に高まっていることが、好調の大きな理由です。その背景には、いくつかの要因があります。
【エネルギー転換の動き】
石炭火力発電から天然ガス火力発電への転換が進んでいます。天然ガスは石炭や石油よりも効率が良く、CO2排出量も少ないため、電力供給の選択肢として重要視されています。
【再生可能エネルギーの補完】
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは供給が不安定です。ガスタービンは、こうした再生可能エネルギーの出力変動を吸収し、安定した電力供給を支える役割を担っています。
【電力需要自体の増加】
世界的に電力需要が増加しており、特に米国でのデータセンター建設ラッシュが需要を押し上げています。AIを動かすためのデータセンターは膨大な電力を消費するため、新たな発電能力が求められています。原子力発電所のように建設に時間がかかるものや、クリーンエネルギーのように安定供給が難しい中、ガスタービンによる火力発電が現実的な選択肢となっています。
【天然ガスの供給増加】
米国でのシェールガス革命により、天然ガスの供給が増えたことも追い風となっています。
こうした強い需要に支えられ、三菱重工は大型ガスタービンを25台受注し、受注高は過去最高を更新しました。また、本体受注に加えて長期アフターサービス契約を締結するケースが多く、これも将来の安定した収益確保につながっています。需要増加に対応するため、ガスタービン部品の増産体制も構築中です。