今後の見通しと投資家が懸念する点
では、今後の三菱重工の業績はどうでしょうか。
2025年度の業績見通しとしては、売上や利益はさらに伸びる計画となっています(売上利益7.4%増、事業利益9.6%増)。
ただし、株式市場が特に注目し、将来の業績を示す指標とされる「受注高」の見通しが、2025年度は16.6%のマイナスとなっています。これはあくまで会社側の予想ですが、エネルギー分野(ガスタービンなど)や航空宇宙防衛分野で受注が減少すると見込んでいるようです。
この受注高のマイナス見通しを受け、決算発表が行われた5月9日以降、三菱重工の株価は下落しています。これは、今期の業績見通しに対して、市場が不安や物足りなさを感じていることの表れでしょう。
今後のガスタービン需要が現在のペースで伸び続けるかは不透明な部分もあります。また、前述のように、三菱重工は自社の力でグイグイと業績を伸ばし続けるというよりは、外部環境(「川の流れ」)に左右されやすい企業であるという特性を理解しておく必要があります。電力需要や防衛予算といったマクロ環境を継続的に見極めることが、投資判断において重要になります。
まとめ:外部環境がカギを握る三菱重工
三菱重工は、世界一の技術力や参入障壁の高い事業領域といった強みを持っているものの、その業績は外部環境の変化によって大きく左右されるという特徴を持つ企業です。現在の好調は、ガスタービン需要(特にデータセンター向け電力)や防衛予算拡大といった外部環境の好転によるところが大きく、企業自らが能動的に変化を牽引しているというよりは、外部の「風」を受けている側面が強いと言えます。
そのため、三菱重工への投資を考える際は、企業そのものの内部的な変化や成長力に期待するというよりは、電力需要や国際情勢、各国の防衛予算といったマクロ環境の動向を読み解く視点が重要になります。例えば、「データセンター需要が増えれば電力が必要になり、ガスタービン需要が増えるかもしれない。そうなると三菱重工か?」といった、連想ゲームのような思考も投資の面白さにつながるかもしれません。
高い技術力は疑いようがありません。もし今後、三菱重工がこの技術力に加え、企業として自らを強く変革していく力を身につけていけば、さらに飛躍する可能性もあるでしょう。しかし、現状ではまだその変化は明確には見えにくい、というのが正直な見方です。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年5月15日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。