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証券口座の乗っ取りが多発…長期投資家が絶対にしておくべき5つの防衛策=栫井駿介

最近、証券口座の乗っ取り被害が拡大しており、投資をしている皆さんは非常に不安を感じられていることと思います。しかし、これを理由に投資を中断してしまうのは非常にもったいないことです。特に長期投資では時間が重要であり、一度投資を中断してしまうと、その時間は取り戻すことができません。私たちにできることは、可能な限りの対策を行い、安心して投資を続けることだと考えます。しっかりと対策をすれば被害を防ぐことができますし、万が一被害に遭った場合でも、証券会社の補償を受けられる可能性も出てきました。この記事では、証券口座乗っ取り被害の現状、その背景、そして個人が取るべき具体的な対策と被害補償について詳しく解説します。特に不安を感じている方や投資に慣れていない方は、ぜひこの記事を読んで、被害を防ぎ、投資を続けるための対策を講じていただければと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

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証券口座乗っ取り被害の深刻な現状

証券口座の乗っ取りは以前から発生していましたが、近年になって被害が急増しています。

有名な投資家であるテスタさんが口座の乗っ取り被害に遭ったというニュースは、非常に大きな話題となりました。

※参考:投資家テスタさん、口座乗っ取り「個人・証券会社とも防犯意識向上を」 – 日本経済新聞(2025年5月7日配信)

テスタさんの場合、早朝に楽天証券から二段階認証のログイン確認メールが届いたことで不審に思い確認したところ、前夜に身に覚えのない注文履歴があったそうです。慌ててパスワードを変更したものの、その間にも新たな注文履歴が更新されていました。幸い、すぐに証券会社に連絡して口座をロックしてもらったため、金銭的な被害は間一髪で避けられたとのことです。

金融庁の発表によると、インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害は急増しています。

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出典:金融庁

2月の時点では2つの証券会社で43件と金額も小さかったのですが、4月16日時点では6つの証券会社で1,847件もの不正アクセスが確認され、被害額は売却金額合計で506億円、買付金額合計で448億円にも上っています。これは報告があったものだけであり、実際にはこれ以上の大きな被害が出ている可能性もあります。

なぜ今、証券口座の乗っ取りが増えているのか?

このような被害の急増を見ると、「証券会社のセキュリティは大丈夫なのか?」という疑問を持つ方もいるでしょう。正直に言うと、これまでの証券会社のセキュリティは、銀行と比べて厳重ではなかったと言えます。

インターネットバンキングが登場して以来、銀行の取引は非常に厳重なセキュリティ対策が講じられてきました。これは、銀行では直接お金を動かすため、セキュリティが甘いと顧客のお金がまるまる失われてしまうリスクがあるからです。

一方、証券会社の口座は、直接現金を動かす仕組みにはなっていませんでした。お金を入金する際も出金する際も、基本的に本人名義の銀行口座を使う必要があったのです。名義が違うと、お金の出し入れはできませんでした。そのため、たとえ第三者が証券口座を乗っ取ったとしても、株を売って得たお金を自分の口座に送金することは難しかったのです。これが、「証券口座を乗っ取ってもあまり意味がない」と考えられ、セキュリティ意識が薄かった背景にあると思われます。

しかし、今回の犯人グループは賢く、この仕組みを突破する方法を編み出しました。それは、証券口座からお金を引き出さなくても利益を得られる方法です。

彼らはまず証券口座にログインし、直接的な現金の引き出しはしませんが、株の売買は行います。ここで彼らが狙うのは、流動性の低い小型株です。事前にそういった株を密かに買っておき、株価を上げないように仕込んでおきます。その後、乗っ取った多数の証券口座を使って、その小型株を一斉に大量に買い付けます。株価は需要と供給で決まるため、突然需要が急増すると株価は一気に高騰します。この高騰したタイミングで、事前に仕込んでおいた自分の持ち株を売却することで利益を得るという手口です。高騰した価格で乗っ取った口座の注文に対して、自分の売りをぶつけるような形で行われます。

元々中国株で行われていたこの手法が、最近では日本株でも行われているという話もあります。

このような「抜け道」ができたことで、犯罪グループにとって証券口座を乗っ取るインセンティブが生まれてしまったのです。

Next: あなたの口座も狙われている?資産を守るための具体的な対策5選

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