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株価急落「タカラトミー」は買いか?バンダイナムコとの差は?弱者が生き残るニッチ戦略の全貌=佐々木悠

タカラトミー<7867>の株価は、実は2022年頃から非常に大きく上昇してきましたが、2025年に入ってからは下落している状況です。なぜタカラトミーの株価がこれほどまでに大きく上昇し、そして足元で下落しているのか。さらにタカラトミーがどのように市場で戦ってきたのか。その特徴的な戦略について解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

2024~2025年のタカラトミー株価推移

まず、タカラトミーの株価の推移を見ていきましょう。

タカラトミー<7867> 週足(SBI証券提供)

タカラトミー<7867> 週足(SBI証券提供)

2020年頃からじっくりと上昇を続け、2023年から2024年にかけて急激に火がついたような動きを見せました。ピーク時には2022年末の約5倍、1,000円台から5,000円台をタッチするまでに上昇しています。

株価上昇の原動力:「キダルト戦略」と業績拡大

なぜタカラトミーの株価はこれほどまでに上昇したのでしょうか。タカラトミーの業績変動、特にコロナ禍以降の株価上昇期を見ると、営業利益も売上も大きく伸びていることが分かります。2023年3月期から2025年3月期にかけての利益の伸びは顕著で、利益が倍近くになっています。

この時期の中期計画の大きなキーワードは、「キダルト(キッズ+アダルト)層」の獲得でした。キダルトとは、子どものような心を持った大人のことで、この層をターゲットに商品を開発・販売していこうという方針が掲げられました。大人は子どもと比べて購買力が高いため、この層が本格的に商品を購入し始めたことが、大きな利益成長につながったと考えられます。

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具体的な事例として挙げられるのが、「ベイブレードX」です。これは、昔からあるベーゴマの進化版のような玩具で、カスタマイズ性が高く、子どもだけでなく大人も楽しめるように開発されました。ベイブレードXは2025年3月期に発売され、第1四半期、第2四半期は非常に好調でした。

下落の要因:期待値とのギャップと外部環境

しかし、その後5,000円から3,000円台まで下落しています。この下落は、特に2025年3月期の第3四半期決算が発表されたタイミングで顕著になりました。決算発表後、株価は下がり続け、5月に出た通期決算でも状況はあまり変わっていません。

株価下落の主な要因は、この「ベイブレードX」の伸び悩みにあります。タカラトミーにとって、2025年3月期第3四半期(10月から12月)は年末商戦という重要な時期でしたが、この時期に期待されたほどの伸びが見られず、失望感から株価が下落してしまいました。

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さらに、2026年3月期の業績予想では営業利益がマイナスになる見込みです。これには複数の理由があります。一つは、タカラトミーがアメリカ市場でも事業を展開している中で、中国で製造した商品をアメリカに輸送する際に関税の影響を受けることです。また、期待されていたベイブレードやトレーディングカードゲーム(特にディズニーのトレーディングカードゲーム)の販売が伸び悩む見込みであることも織り込まれています。

Next: 業績は今後どうなる?大人が牽引「キダルト市場」は拡大も…

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