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無印良品をパクって超えた中国発「メイソウ」脅威のビジネスモデルとは?“ちいかわ”を世界に広める偉業も=牧野武文

毎週100種「新商品」が誕生する

メイソウの最大の強さが「711」システムでした。これは7日ごとに1万個の商品企画を立て、100個の商品を市場に投入するというものです。毎週1万個の商品提案をするというのは、恐ろしいほどの量です。

と言っても、中国では不可能な話ではありませんでした。浙江省義烏市の卸業者を見ていると、十年一日の日用品を製造して並べているだけに見えてしまうかもしれませんが、彼らの強さの秘密は提案力です。卸・中間業者・製造工場の誰もが「こんな商品は売れるのではないか」と考案をし、試作をし、企業に提案をしてまわります。

この提案力が最もうまく回っているのが玩具の世界で、現在の世の中では、ちょっと面白い玩具というのはだいたい中国の企業が考案したものになっています。例えば、日本で販売されているかどうかわかりませんが、手持ちのハンディ扇風機で、回転するとメッセージが表示されるというものがあります。羽根に一列のLEDが並べてあり、回転に合わせて点滅することで文字を表示するというものです。自分で好きなメッセージが設定できる玩具としても販売されていますし、固定メッセージを入れた銀行などの景品としても配布されています。

また、まな板で切った食材を掬いあげるキッチンスクレーパーというものがありますが、中国で販売されているものの中には、中央に折り目がついていて、軽く折り曲げることができるものがあります。食材を鍋の中に入れる時に、折り目で角度をつけて入れると、食材が鍋の外に飛び出ないというものです。

このようなアイディア商品が、関心をするものから、アイディア倒れだと笑ってしまうようなものまでたくさんあります。無数の企業が、新しいものを考案し、提案をしているのです。

このように提案をしてくれる企業がたくさんあるために、1週間に1万件の商品企画を立てるというのも、チームの人数にもよりますが、不可能ではありません。そして、ここが重要ですが、それが100個に絞られるということです。100分の1に厳選されるのです。そこまで厳選された商品が、毎週100個新たに店頭に並ぶというのはすごい話です。

MUJI中国は、今では新製品投入を増やしているようですが、2020年頃までは季節ごとの投入で、新製品数は年間数十件でした。一方、メイソウは年間にすると5,200件になります。

これにより、メイソウは、買うものがなくても毎週訪れる価値のある店になりました。新しい商品が必ず見つかるわけですから、それを見るだけでも楽しいわけです。

他店と同じような商品を徹底的に安く売る

とは言え、品質や商品の完成度という点では、MUJIと比較すること自体、MUJIに失礼なほど違いがあります。やはり、つくりは雑で、デザインレベルも低いことは間違いありません。

しかし、価格がMUJIの半分以下であり、ものによっては3分の1以下のものまであります。MUJIなどと同類の商品も多く、いわゆる平替(ピンティー、平価代替品)として機能しました。

例えば、MUJIではシンプル水筒(クリアマグボトル)が、日本では990円で販売されています。同じものが中国のMUJIでは58元(約1,150円)で販売されています。まったく同じものではないですが、似たものはメイソウでは20元程度で販売されています。

このクリアボトルは、片手で持ちながら口を開けることができるなど、いろいろ考えられていますが、その機能は水筒であるということには変わりありません。メイソウの水筒は特別な工夫はされていませんが、水を持ち歩くことができるという主要な機能の点では同じです。

この価格差により、「MUJIの水筒はおしゃれだけど、高いな。それに水筒を買っても結局使わなくなることも多いからなあ」と躊躇してしまう人が、メイソウを訪れると、20元で販売されているのを見て、「20元なら使わなくなっても痛くない」と考え、買ってしまうことになります。

2018年頃からMUJIの業績が伸びなくなったのは、MUJIのセール待ちをしている間に、メイソウで買ってしまう人がかなりいて、本来の顧客を奪われていたことが大きかったのではないかと思います。

メイソウはこの平替戦略をさらに進めます。2017年頃から、同源平替を進めていくのです。今、MUJIを含めた小売チェーンで、自社で工場を持ち製品を製造しているというところはほとんどありません。いずれかの製造メーカーに委託製造をしてもらっているのが一般的です。

メイソウは、MUJIを含め、さまざまな小売業でヒットをしている商品の委託製造先を調べました。その多くは中国企業になります。そして、その企業を訪問をし、メイソウ向けの商品も製造してもらう交渉を進めたのです。つまり、源が同じであるため、同源平替ということになります。<中略>

メイソウが、次の成長戦略として打ち出したのがIPグッズでした。有名なアニメやコミック、ゲームのキャラクターの使用権を獲得し、そのグッズを販売することで利益をあげようというものです。

Next: 「ちいかわ」が世界的キャラに?本来は日本企業がやるべき仕事だが…

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