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無印良品をパクって超えた中国発「メイソウ」脅威のビジネスモデルとは?“ちいかわ”を世界に広める偉業も=牧野武文

現在でもクローズドレイアウトを採用している典型例はスーパーです。棚が人の背丈以上になっていて、コーナーの仕切りにもなっています。そして、調味料、麺類、菓子材料などの種類別コーナーをつくります。これは、目的の商品を探しやすいというメリットがあります。胡椒を買う必要がある時は、天井からぶら下がっているコーナー案内に従って調味料のコーナーを見つけ、そこに行き、コーナー内の棚を見ていけばだいたい見つかります。買うものがすでに決まっている時に便利なレイアウトです。

一方、オープンレイアウトは、買うものが決まっていない時にメリットのあるレイアウトです。スーパーでも、「今日の夕飯の献立は何にしようか」と考えながら、買うものを決めていないことが多い生鮮食料品コーナーはオープンレイアウトになっています。棚を目の高さよりも低くすることにより、全体を見渡すことができるため、肉と野菜の両方を目に入れながら買うものを決めていくことができます。

小売店でも昔の文房具店はクローズドレイアウトでした。高い棚があり、筆記具・紙製品・事務製品・芸術用品と分かれていました。事務職の人が領収書用紙を補充するために文房具店を訪れたときは、絵の具や筆などの芸術用品は用がないわけですから探しやすいのです。

しかし、MUJIのように、異なるジャンルの製品が特定の世代、顧客層に向けて陳列されている場合、「今日は、スリッパだけを買いにきた」と言われて、スリッパだけ買って帰られてしまうのはもったいないことになります。異なるジャンルの商品、例えばレトルトカレーや夏用ジャケットなども陳列しているのですから、そちらも見てほしい。そのため、オープンレイアウトにします。

このようなオープンレイアウトの店は、用がなくても訪れ、店内を周遊するようになります。メイソウは、この「店内を周遊する」ことをねらいました。そして、価格は非常に安いわけですから、ついで買いを発生させる。ここが、当初のメイソウのポイントとなりました。

わずか3年で700店舗を達成

創業年の2013年は27店舗でしたが、翌年には373店舗になり、その翌年には700店舗に達しています。ちなみにMUJIの現在の中国での店舗数は398店舗です。

このスタートダッシュは異常とも言える速度で、メイソウが最初から巨大小売チェーンになることをねらっていたことがうかがわれます。

そのために、メイソウは独特な加盟店モデルを考案しました。これは加盟店モデルと直営店モデルのハイブリッドのような形です。

通常、加盟モデルに参加をするには、加盟料、店舗改装費、商品仕入れ費用などを最初に支払う必要があり、その後、店舗を運営し、売上の数%をロイヤリティ(権利使用料)として本部に支払います。しかし、メイソウの場合は、加盟料が5万元から8万元(約160万円)と低く、これに初期仕入れ費用を支払えば加盟することができます。店舗をすでに持っていれば、改装もメイソウ側の負担で行います。

そして、ここが他の加盟モデルと大きく違うところですが、店舗の運営は基本的にメイソウ側が行うのです。加盟主は何もすることはありません。これでいて、利益の38%が加盟主のものとなるのです。

つまり、これはもはや加盟モデルではなく投資モデルです。店舗を提供し、多少の加盟費を払いさえすれば、後は寝ていてもお金が入ってくる。その店が失敗をしても、リスクは加盟費の8万元がパーになるだけです。このローリスクの加盟モデルは非常に注目されました。次から次へと加盟したいという人が殺到し、メイソウはその中から、店舗の立地条件を厳選して選ぶことができます。

おそらく、メイソウは加盟モデルで儲けるのではなく、商品を売って儲けようという考えだったのだと思います。あるいは、小売チェーンを素早く拡大するために、加盟ビジネスをうまく利用したということもできます。

これにより、メイソウは、立地条件のいい場所に大量に素早く店舗を出すことができました。

店舗の運営は、加盟主ではなく、本部のスタッフが行う。これもうまく作用しました。実質的には直営店と同じですから、商品の質や業務の標準化が容易になります。加盟モデルでやっかいなのは、加盟主が規約違反をしてないかどうかを見張らなければならないことです。飲食チェーンであれば、本部が供給する素材ではなく、市場で安く仕入れた代替品を使う、消費期限が切れた食材を使う、小売チェーンであれば、本部が提供していない商品を販売する、価格を勝手に変えるなど、ブランドイメージを毀損しかねないことが店舗では横行するようになります。

そのため、一般的な加盟モデルでは、本部のエリアマネージャーが店舗を回って、違反がないかどうかを厳しくチェックします。もちろん、そこで、経営状況を把握し、適切なアドバイスをしたり、時には一緒になってプロモーション施策を実行したりしますが、この違反管理だけでもかなりの手間になります。それが、実質直営店ですから、このような管理業務は必要なくなります。

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