視点2:仮にパッケージングが主流になっても、レーザーテックは恩恵を受ける
もう1つの懸念は、半導体開発トレンドがパッケージング技術へ移行することでした。これにより、超最先端のチップではなく、1世代や2世代前のチップを組み合わせて高性能化を図るようになるため、レーザーテックが手掛ける超先端検査装置の需要が減るというものでした。
しかし、これは逆の見方もできます。パッケージング技術によって、1世代や2世代前の半導体チップ自体の「数量」需要は確実に増加します。つまり、半導体チップ全体の総量は伸びるという事実があるのです。
レーザーテックは、最先端のEUVマスク検査装置だけでなく、その手前の世代(DUV検査装置など)の検査装置も手掛けています。DUV検査装置は、最先端のものと比べて単価は低いものの、この分野でもレーザーテックは世界シェア70%〜80%という圧倒的な地位を確立しています。
マスク検査装置市場全体は、2030年〜2035年にかけて年平均7%〜8%程度の成長が予測されています。
したがって、たとえ最先端チップの開発トレンドがパッケージングに移行したとしても、半導体市場全体の拡大という事実は変わらず、数量増の恩恵として、レーザーテックのDUV検査装置などへの需要が大きく高まると見ることができます。
つまり、どちらの技術トレンドへ進んでも、レーザーテックの検査装置は中長期的に恩恵を受ける構造にあると言えるのです。
さらに、超先端のEUV向け装置は受注から納品まで1年半〜2年かかるリードタイムがありますが、DUV検査装置であればリードタイムがより短くなります。これは、レーザーテックにとって資本効率の向上につながり、経営的なリスクも低減されるというメリットがあります。
したがって、パッケージングが主流になったとしても、レーザーテックの検査装置の需要は高まるというのが、中長期で見た自然な考え方です。
まとめと長期投資の心構え
今回のレーザーテックを巡る状況をまとめると、以下の2点から、レーザーテックの長期的なポテンシャルは依然として高いと考えられます。
- 短期的なネガティブ要因はあっても、AIデータセンターの消費電力削減の観点から、超先端半導体チップに必要な検査装置の需要は中長期的に必須であり、今後も拡大が見込まれる。
- 仮に半導体製造プロセスのトレンドがパッケージングに移行したとしても、半導体チップ全体の数量需要は高まり、レーザーテックが70%〜80%の世界シェアを持つ1世代・2世代前の検査装置の需要が上がることで、業績的な恩恵を受ける。
今回のネガティブなトピックも、短絡的に捉えすぎず、中長期的に企業価値にどれだけ影響を与えるかを冷静に俯瞰して判断することが重要です。
半導体関連銘柄は業績も株価も大きく変動しますが、そこに一喜一憂するのではなく、高い視座で業界や会社を理解することが求められます。市場が悲観している今こそ、企業のポテンシャルを冷静に評価し、今後の行動を考える良い機会なのかもしれません。長期投資家としては、このように「どっしり構える」心構えが非常に重要であると、私は考えます。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年8月17日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。