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日本株に「森山リスク」浮上。コメ農家か自動車か…日米“口約束”関税が揺さぶる市場=斎藤満

もう1つの齟齬が日本からの5,500億ドルの投資についてです。

トランプ政権は日本からのお金で米国の政府系ファンドを作り、トランプ大統領の好きな分野に投資し、その利益の9割を米国が得るというもので、これはスポーツの世界の「契約金」のようなものと理解しています。

ところが、日本サイドではあくまで融資や政府保証の形をとるもので、民間ベースでの資金負担はあまりないと言っています。ここにも大きなギャップがあり、簡単に埋まりそうにありません。

森山リスク

このうち、コメの問題では小泉大臣が米国からの輸入もありうるとしているのに対し、農水族のトップである森山幹事長がかたくなで、コメ農家を守るために、コメの輸入はまかりならぬ、との姿勢です。

トランプ政権は日本の農協を解体せよ、と指令してきましたが、森山幹事長がこれを受け付けません。そこで森山幹事長を切れ、となるのですが、彼に弱みを握られている石破総理は幹事長を切れません。

このため、コメを巡る米国と日本の農水族との攻防となったのですが、米国からすれば、日本が合意の条件を守らないなら、自動車も含めた関税を下げない、ということにもなりかねません。15%の関税率なら日本の自動車業界は欧米のライバルと伍して戦えますが、27.5%になると、ハンデが厳しくなり、日本車への影響は無視できなくなります。

さらに市場は一旦、関税が15%に引き下げられる、との赤沢大臣の話を信じて株を買い上げたのですが、税率がまた高いままの状態に戻れば、株式市場のムードは一変します。相互関税が仮に最高裁でも「違法」となっても、別の法体系にある自動車や鉄鋼の関税は救われないからです。

さらに今後、半導体や医薬品に高い関税が課せられても「15%の天井」は使えません。

EUや韓国などと比べても15%関税なら日本は決して不利にはなりませんが、合意事項の不履行で元の25%や27.5%に引き上げられれば、株式市場は失望の売りを浴びせ、「森山株安」と言われかねません。

コメ農家を守るか、自動車を守るか

農水族は今回の関税交渉にあたり、自動車業界がつぶれてもコメ農家を守る、と発言して物議をかもしました。

自民党農水族にしてみれば、票田のコメ農家を守ることが彼らには「是」となるのですが、日本経済や株式市場、さらに自動車業界からすれば聞き捨てならない言葉です。日本経済でみれば「コメか車か」とはなりません。

日本全体の利益を考えた時にどういう形が日本の国益になるのか、が問われます。

石破総理も「国益に反することはしない」と繰り返していましたが、コメ農家が「国益」ではありません。日本人がコメの安定確保、コメ食の維持を図ったうえで、自動車やその他の輸出企業の利益も考えねばなりません。日本全体の利益になるなら、自動車輸出の減少よりもコメの輸入も選択肢になります。

Next: コメを輸入しても、農家を守れる?日米両得の道は…

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