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株価暴落「岩谷産業」今が買い?水素事業の将来性と3つのリスクを長期投資家はどう見るべきか=佐々木悠

今回は「割安企業」あるいは「水素関連銘柄」として個人投資家からの注目が特に集まっている岩谷産業<8088>について深掘りして解説していきます。岩谷産業の事業内容、直近の株価が大きく暴落した理由、そして水素関連事業にどこまで期待できるのか、いま投資すべきなのかどうかといった点について、詳細に分析しますので、ぜひ最後までお読みください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

岩谷産業とは?多角的な事業内容と市場での強み

岩谷産業は、ガスを中心にエネルギー関連の素材なども取り扱う商社です。その事業は大きく分けて3つの柱から成り立っています。

<1. 総合エネルギー事業(BtoC中心)>

我々の生活に最も身近なのがこの総合エネルギー事業です。

  • LPガス・都市ガス
  • カセットコンロ用ガスなど、一般消費者向けのガス製品を取り扱っています。

  • 売上・利益の基盤
  • 売上高8,830億円のうち約42%、利益462億円のうち**約40%**を占める、岩谷産業のコア事業です。主に消費者向けのBtoC事業と言えます。

LPガスは、石油や天然ガスと同じ場所から採掘され、利用場所に合わせて個別に供給される特徴があります。その大半は輸入に頼っており、日本にはエネオス、三井物産、コスモエネルギーホールディングスなど主要な輸入企業が5社ほど存在します。岩谷産業はその中で5番手に位置し、海外からLPガスを輸入しています。

輸入されたLPガスは、約1,000社の卸売業者に供給されますが、岩谷産業は卸売市場においてシェア14%でトップを誇ります。さらに、約15,000社の小売業者を通じて最終顧客に販売される小売市場でも、シェア5.1%でトップの地位を確立しています。

しかし、LPガス需要は1990年代中盤から2000年代中盤をピークに減少傾向にあり、供給量も減っています。また、輸入に依存しているため、市況の変化(仕入れ価格の変動など)の影響を受けやすいという特性があります。

<2. 産業ガス機械事業(BtoB中心)>

この事業では、水素やヘリウムといった産業ガスを取り扱っています。

全体売上高の約30%、利益の約36%を占める重要な事業で、主に事業者向けのBtoB事業です。

特筆すべきは、岩谷産業の水素事業の歴史です。実は80年以上の長きにわたり水素に取り組んでおり、1941年には水素の販売を開始し、1958年には製造も始めています。1978年には日本初の大型商用液化水素製造プラントを稼働させ、JAXAへのロケット燃料として液化水素を供給するなど、その技術と実績は非常に豊富です。

3. マテリアル事業(BtoB中心)

この事業では、金属(ステンレス、アルミニウム)、電子マテリアル(スマートフォン関連部材)、機能樹脂など、多岐にわたる素材を取り扱っています。

  • 高い市場シェア
  • 特にバイオマスPET樹脂では市場シェア70%で業界1位を誇るなど、高いシェアを持つ素材を有しているのが特徴です。

  • 事業規模
  • 事業全体への影響度としては、売上・利益ともに3番手の規模となっています。

中長期的な業績推移と変動要因

岩谷産業の業績は、中長期的に見ると順調に伸びており、売上高は過去最高を更新する予定です。営業利益も2024年には最高を記録しています。

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しかし、同社の特徴として、ガス価格や各種素材の現在価格変動など、市況変化の影響を受けやすく、業績に「ガタつき」が出やすい点が挙げられます。特に、輸入に頼る総合エネルギー事業は、輸入コストの上昇によって営業利益が変動しやすい傾向にあります。

一方で、産業ガス機械事業とマテリアル事業は直近で成長しており、業績を牽引する役割を果たしています。

Next: なぜ株価暴落?水素への期待と現実…

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