fbpx

10兆円硬貨で万事解決?「ヘリマネ」という究極のアベノリスク=吉田繁治

2017年には「日銀に出口なし」が市場コンセンサスとなる

いったん銀行が買った国債でファイナンスしているときは、銀行は国民の預金で国債を買うので、貯蓄による消費減を、政府が財政支出の需要にすることになります。このため国の生産を超過する需要ではなく、インフレにはならない。需要不足からくる不況対策になるのです。

現在、日銀が「異次元緩和」で買っている国債は、いずれは出口政策による日銀の国債売り、日銀当座預金の減少に繋がるため、「5年間でも一時的」と見られているのです。
(注)ただし実際には出口政策はとても困難です

現在の金融市場はまだ、日銀が国債を売って膨らんだマネーを縮小させるときがくると見ていますが、2017年になれば「出口なし」の認識に変わるでしょう。

マネーの縮小がない、日銀による財政ファイナンス

前掲(1)~(3)ような財政ファイナンスでは、国債の償還がないため、日銀が保有国債を減らして、マネーを縮小する手段がない。

このため拡大したマネタリー・ベースが、将来にわたって減ることはない。結果は、増えた財政支出によって作られた需要の超過によるインフレです。これがヘリコプター・マネーの帰結です。

仮に財政支出が、1999年の買い物に使えた地域振興券(1人2万円:総額6194億円)や、現在の児童1人当たり5000円/月の子育て支援金の増額になったとしても同じです。

つまり、バーナンキが言う「ヘリコプターでばらまくマネー」のようになるかどうかは、日銀が恒久的な財政ファイナンスとして国債を買うかどうかにかかっているのです。

ヘリコプター・マネーはインフレを招く

ヘリコプター・マネーの方法で、赤字の政府財政のファイナンスが行われると、名目GDPを増やす消費財のインフレになります。

10兆円ならGDPの2%ですから、1年後に物価(CPI)は2%は上がります。20兆円なら4%の消費財インフレです。

これには、増え続ける通貨の価値の下落による大きな円安も伴うので、そのぶん輸入物価上昇からのインフレも加わるでしょう。

バーナンキが日本に来た翌日、金融市場は、今秋からの「ヘリコプター・マネー」実施を予想し、円を売り、ドルとユーロを買ったのです。数日で5円も下がる円安は異常なものです。

首相を補佐する菅官房長官は、翌日の定例会見で「ヘリコプター・マネーは検討していない」と否定しました。しかし検討していても「検討している」と言うわけはない。真実はどこにあるのか?

Next: 「バーナンキを日本に招いた」事実だけが、真実を物語る

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー