「バーナンキを日本に招いた」事実だけが、真実を物語る
ベン・バーナンキを、英国のユーロ離脱に起因した円の急騰(6円幅)直後に招いた理由にこそ、真実があるでしょう。
マイナス金利下の円高は、株価の下落を招き、将来の財政破産も早めて、アベノミクスの失政を発現させるからです。安倍首相は、参院選挙前に「アベノミクスにはまだまだ、いくらでも方法があるんです」と言っていました。これが指すのはヘリコプター・マネーでしょう。
安倍首相は、
- 異次元緩和によるマネタリー・ベースの増加
- ヘリコプター・マネーによるマネー・サプライの増加
を混同していた節があります。
自民党が政権に就くことが確実視されていた2012年10月頃に、「日銀に紙幣をじゃんじゃん刷らせて、公共事業(財政支出)を10年で200兆円行う(国土強靭化投資)」と言っていたからです。
多数派の国会で日銀法を改正し、日銀の政府からの独立をも奪うとしていました。当時の白川総裁は、安倍首相に抗議し、任期切れ前に辞任しています。白川総裁は、日銀は国債を買ってマネタリー・ベースは増やせても、マネー・サプライは操作できないと言っていたからです。
当時の安倍首相の発言内容は、マネー・サプライを増やしてインフレを作るヘリコプター・マネーそのものでした。これを見て海外ヘッジファンドは円の価値下落を予想し、円を売り浴びせて円安にしています(80円→100円→120円)。
その後、国土強靭化投資案は消えましたが、2016年秋には復活しそうな印象です。
2016年秋に何が起こるか
英国のEU離脱、トルコの大規模な軍事クーデター、フランス南部ニースのテロ、中国の南シナ領土問題、キャメロンの辞任とメイ首相の就任、トランプ候補の米共和党での指名など、世界の動きは日々の単位で激しい。
これらは、根底のところで、リーマン危機後のゼロ金利による金融バブル経済が煮詰まり、中身が露出してきたことによるでしょう。
国民の所得格差への不満を原動力にしたトランプが米大統領になればドル安が襲います。クリントン人気の低さから、トランプ大統領もあり得るシナリオですが、金融市場にとっては英国EU離脱以上の衝撃になるでしょう。いずれも今秋です。
経済の上を、政治リスクが覆ってきました。日本では「アベノリスク」です。
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