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専門家が予測するトランプ失脚と「2020年アメリカ内乱」のシナリオ=高島康司

トランプの弾劾を予測する政治学者

このような状況になると、アメリカ国内の政治的な混乱は収拾がつかなくなるかもしれない。では、本当にトランプが弾劾される可能性はあるのだろうか?

実は、トランプ弾劾の現実性は想像以上に高い。まだクリントンの圧倒的な優勢が伝えられ、どの調査でもクリントンが次期大統領になることが確定したかのような状況であった2016年の9月に早くもトランプの勝利を予想した政治学者が、トランプの弾劾を予想している。それは、アラン・リッチマン教授である。

アラン・リッチマンは首都ワシントンにあるアメリカン大学の政治学部の教授である。リッチマンは自分が開発した独自の手法を用いて、過去34年間、すべての大統領選挙の勝者を的中させてきた。

実は、候補者本人ではなく、党に対する支持率を丹念に調べると、勝者の予測は難しくないという。具体的な手法は公開されていないものの、この手法で予測に成功してきた。ニューエイジ系のポップカルチャーにはジョン・ホーグがおり、トランプの勝利をかなり早い段階で予測していたが、いわばリッチマンは表の世界のジョン・ホーグのような存在だ。

「必ず弾劾される」

リッチマンによると、むしろトランプが弾劾されないほうが不自然だという。過去の大統領では、1868年のアンドリュー・ジャクソン、1974年のリチャード・ニクソン、そして1998年のビル・クリントンの3人が弾劾の対象となった。

ただ、ジャクソンは弾劾裁判にかけられたものの無罪となり、クリントンも有罪に必要な票数に達しなかった。弾劾裁判で有罪が決定したのはニクソンだけだったが、ニクソンは罷免される前に自ら辞任した。

リッチマンは、トランプほど違法行為の疑惑が多い大統領は過去に例がないとしている。弾劾裁判に持ち込む場合、過去に犯した行為の違法性がひとつでも証明されれば、アメリカの憲法では弾劾裁判の対象にすることができる。

これまでのトランプの経歴では、弾劾裁判の対象となり得る違法行為は枚挙のいとまがないとしている。最近出されたリッチマンの最新刊『弾劾弁護論』では、事業関連の利害相反、ロシアとの違法な関係、過去の法的争い、脱税疑惑、チャリティーの悪用、トランプ大学の違法性など13のケースがあげられている。また、地球温暖化防止のパリ協定からの離脱は、人間性に対する犯罪として認定される可能性もあるとしている。

必ずしも高くない弾劾のハードル

弾劾裁判は、下院の過半数の議員の同意に基づき実施される。その後、上院議員の3分の2の同意が得られれば、弾劾は成立し大統領は罷免される。

上院で弾劾が実際に成立する可能性だが、上院では193名の民主党議員と23名の共和党議員が賛成する必要があるとしている。トランプの出身政党の共和党が弾劾に賛成するとは考えにくいという意見もあるとしながらも、もしロシアとの違法な関係が証明されれば、共和党も弾劾に動かざるを得ないと見ている。

さらに、共和党内ではペンス副大統領の人気が非常に高く、トランプを早いうちに弾劾してペンスを大統領にしたいとする意見もあるという。

このように、2016年の大統領選挙でトランプが苦戦を強いられ、ほぼすべての世論調査がクリントンの勝利を予想していた昨年の9月に、早くもトランプの勝利を予想して的中させた政治学者が、トランプは確実に弾劾されると予想しているのである。その可能性は決して低くないと見たほうがよいだろう。

Next: 気鋭の歴史学者が「2020年代のアメリカ内乱」を予測する理由

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