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やはり買わなくて正解だったタカタ<7312> 瀬戸際の今どんな攻防が?=栫井駿介

急落したタカタ<7312>について考察します。16日に民事再生法申請に向けての最終調整が行われていることが報じられてから、3日連続でストップ安となりました。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

「民事再生法申請に向け最終調整」報道のタカタ、現在のポイント

民事再生法適用なら株式は紙くずの可能性大

タカタ<7312>が急落しています。6月16日に民事再生法申請に向けて最終調整が行われていることが報じられてから3日連続でストップ安となりました(※編注:本稿執筆時点6月21日22時。なお、22日前場に126円で取引が成立。23日には乗用車メーカー各社が同社への資金繰り支援を行うとの一部報道があり、大引けは160円ストップ高比例配分となっています)。

タカタ<7312> 日足(SBI証券提供)

タカタ<7312> 日足(SBI証券提供)

今回のケースでは、民事再生法が適用されると100%減資となって株式が無価値になる可能性が濃厚です。その後、債権カット、スポンサーに指名されたKSS社による増資という手順になると考えられます。

私は以前、タカタの法的整理(会社更生法または民事再生法)はないのではないかと予想しましたが、残念ながらこの読みは外れてしまいそうです。

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タカタが法的整理を申請してしまうと、最大で2兆円とも言われるリコール費用は自動車メーカーが負担しなければならなくなります。そのため、特に最大の取引先であるホンダが許容しないと考えたのです。

実際に、報道後もタカタ側が肯定しないということは、まだ本決まりではなく、抵抗勢力がいるからだと考えられます。それが創業家とも言われていますが、私はそれ以上に自動車メーカー側の要因だと考えます。

このような重大情報の報道が先走ってしまうのは、民事再生法に持っていきたい勢力(それによって得をするスポンサー側)によるリークがあるからでしょう。一向に進まない議論に業を煮やして外堀を埋めてしまおうと考えているのかもしれません。

以前から警鐘を鳴らしていた

いずれにしても、私はタカタへの投資はやめたほうがいいと警鐘を鳴らしていました。その理由は、巨額債務解消に見合う増資で、10倍以上の希薄化が発生することが明らかだったからです。

希薄化とは、増資により株式数が増えることで、既存株主の持分が目減りしてしまうことです。10倍の希薄化ということは、価値が10分の1になってしまいます。それを踏まえるとこれまでのタカタの株価は明らかに割高だったのです。

タカタはリコール問題を除けば本業は堅調で、一見バリュー株投資向きの銘柄にも思えました。しかし、最終的に2兆円という巨額なリコール費用が価値を大きく毀損してしまう結果になりそうです。

バリュー株投資は、単に下がったから買えばいいというものではありません。本当に危険な企業とそうでない企業を峻別し、あるべき価値に対して投資するものです。シナリオの読みは外れたかも知れませんが、価値を踏まえていれば決して投資することはなかったでしょう。

長期投資家の皆さんがこのような危険な銘柄に手を出さないようにすることも、つばめ投資顧問の役割だと考えています。

つばめ投資顧問は相場変動に左右されない「バリュー株投資」を提唱しています。バリュー株投資についてはこちらのページをご覧ください。記事に関する質問も受け付けています。

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年6月21日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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