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浅薄すぎる円安・株高ハッピーシナリオ。「危機の兆し」は至るところに=E氏

短期筋の円売り仕掛けで起こっていること

では、なぜドル高以上に円安が進行したのか?

一番大きな理由は、ヘッジファンドなどの短期筋によるポジション解消と、短期的な売り仕掛けの対象になったという需給要因によるものと考えています。つまり、あくまでも需給要因による大幅変動が「何かファンダメンタルズで構造変化が起きている」という幻想を引き起こしているのに過ぎないのです。

元々短期筋は、主要通貨の中で円はドルに次いでロングの対象でしたが、トランプショック以降急激にロングの解消を急ぎました。

この理由は、ヘッジファンドの決算月11月を控えてロングもショートもポジション解消の方向にあることや、トランプショックで全アセットにショートスクイズ的な動きが生じたため、持ち高ロングだった円は(上で説明したファンダメンタルズによる屁理屈も可能なので)格好の売り対象になった可能性が高いです。

この短期筋によるロング解消のための円売りは11月下旬まで続きました。つまり、101円からの急激な円安は、一見すると仕掛けた筋が大儲けしたかのように見えますが、少なくとも短期筋に関しては112~113円台までは自らのロングを処分していたので、儲けたどころか大損しながら売り叩いていたのです。

この持ち高解消のための円の叩き売りは11月下旬で終了したため独歩の円安は終焉するかと思われましたが、予想に反し12月以降も円は他通貨よりも弱含むこととなりました。それは、短期筋がロングを解消しただけでなく、そのままドテンでショートを積み増し始めたからです。

一転して円ショートを増やした理由は定かではありませんが、同じ時期に原油のロングが急増し、ゴールドやシルバーなど安全資産とされるアセットのショートが増えていることから、持続的な上昇相場に入ったと判断して、リスクオンアセットのロング/リスクオフアセットのショートのポジションを構築し始めた可能性が高いです。その過程で、安全資産として認識される円のショートを作り始めたのでしょう。

しかし、もしこれが事実とすると、次のような疑問が浮かぶでしょう。

ドル高はリスクオンなのか?

これに対する決まった答えはありませんが、過去は決してそうではなく、それにも関わらずマーケットがドル高/リスクオンをエンジョイしているところに今のマーケットの異常性があると考えています。

利上げ確度の前倒しなどでドルが強くなるということは、米国が利上げに耐えられる経済だと考える事も出来るし、また輸出主導型の先進国においては自国通貨安になるので、米国や日本を始めとする先進国は一般的にはドル高でリスクオンになり易いといえます。

しかし、この期待が過去長く続かなかったのは、ドル高で新興国通貨安やコモディティ安をもたらすために、新興国経済危機などを誘発しやすいためです。

過去のケースでは、先進国がリスクオンを謳歌していても新興国からのリスクオフが波及する形で世界全体がリスクオフに転じることが多々ありました。

Next: リスクオンに酔いしれるうち、一転円高・株安になる

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