リスクオンに酔いしれるうち、一転円高・株安になる
具体的に見てみましょう。リーマンショック以降、米FRBが引き締め決定をしたのは、2013年12月FOMCでのテーパリング(緩和縮小)開始決定、2015年12月FOMCでのゼロ金利解除決定に続き今回で三度目です。
まず、2013年12月のFOMC後、マーケットは「テーパリング(緩和縮小)が出来るほど力強い経済」に酔いしれて米国や日本ではリスクオンが続きました。
しかし、ドルの大幅上昇にともない、ドル建財務が多い新興国主体にデフォルト懸念が高まりました。アルゼンチンのデフォルト懸念をきっかけに、2014年に入るとトルコ、南アなどのフラジャイル5諸国などの新興国から一斉にマネーが引き揚げられることになり、2014年1月の新興国通貨危機が起きたのです。
この間のドルはというと、FOMC前後であまり大きな動きはなく、年明け後の世界的なリスクオフから緩やかに上昇をし始めました。しかし、安全資産需要のニーズがより強い円の上昇ペースが早かったため、対ドルの円相場は利上げ決定後1週間は下落しましたが、その後(特に新興国危機以降)は円高が進行してしまったのです。
当然、日本株も円高と新興国危機を嫌気して急落したのは言うまでもありません。
次の引き締めである昨年12月FOMCでの初回利上げ時の米国株は、直後は利上げに耐えられる経済を好感して上昇したものの、翌日のマーケット以降は軟調になっています。好調の持続性が短かったのは、昨年10月以降、利上げ時期後退を囃した過度にリスクオンなマーケットが続いたことで11月後半以降は買い疲れ感が出ていたためでしょう。
結果、米国株は年内弱含みのもみ合いで、年明けからは米国利上げに耐えかねた中国の元切り下げを契機とする上海株暴落を嫌気して世界的な株価急落となりました。
この間のドルはやはり利上げを好感して、上海ショック後も上昇し続けていますが、円相場は一転して急上昇しています。
つまり、昨年12月の初回利上げ時の円のボトムはFOMCでの利上げ決定直後の上ヒゲだけで、以降は緩やかに円高になり、年明け後は安全資産逃避需要から急激な円高になったのです。
このように、米国の利上げによるドル高が米国や日本にとってポジティブという浮かれた見方をしてリスクオンに酔いしれているうちに、ドル高で経済危機になる新興国発のリスクオフに足元をすくわれて、一転円高・株安になるというのが過去の引き締め時のケースです。
では、今回はどうでしょう?
米国株はFOMC直後こそ下落したものの、昨日のマーケットでは力強くリカバリーしていますし、ドルは両日ともに強い米経済を謳歌する形で上昇しています。
しかし、その一方で、中国元やトルコリラなど新興国通貨の多くはリーマンショック以降の最安値に沈み、外貨準備が急減していますので、いつ新興国危機が勃発してもおかしくありません。