「雇用改善」はアベノミクスの成果ではない。リフレ派の矛盾とは?
では二番目の「金融緩和が雇用の改善をもたらしている」という議論はどうでしょう。
対して、「雇用指標の改善をもたらしている要因は人手不足であって、アベノミクスの成功ではない」ということを示すため、当日用意したのがこちらのグラフです。
https://twitter.com/sima9ra/status/819145507318566912
http://bit.ly/2j0MET8
このグラフで示した有効求人倍率は、雇いたい意欲すなわち労働力への需要が、雇われたい意欲すなわち労働力の供給に対して相対的に強くなれば上昇し、雇用環境が改善したと評価されます。1970年代以降アベノミクス直前までは、20年弱の周期で訪れる不動産バブルの過熱と共にピークを迎えていました。そして現在、確かに有効求人倍率は1990年前後のバブル期並みに上昇しています。
問題は、供給に対する需要の相対的な強まりが実現する経路には、大きく二通りあること。
まず一つは経済活動が活発になり、需要の絶対水準が高まる場合。この場合は有効求人倍率の上昇と共に、実際に雇われる人数も増加するでしょう。
もう一つは経済動向とは無関係に、労働力の供給水準が低下する場合。こちらの場合は有効求人倍率の上昇と共に、逆に雇われる人数が減少することでしょう。
したがって、リフレ派の主張が正しいなら、直近において雇われる人数が増加しているはず。その指標となるのが上記グラフの「新規就職件数」なのですが、ご覧のとおり、新規就職件数はむしろ減少しています。すなわち、直近における有効求人倍率の上昇要因は、過去の不動産バブル期とは異なり、景気回復ではなく、生産年齢人口減少によって労働力の供給が減少した結果に過ぎません。
そもそも、前回も紹介したように内需GDPが3四半期連続で前年割れとなっている状況で、「アベノミクスで景気が回復し、雇用環境が改善している」と言えるはずもないのです。
https://twitter.com/sima9ra/status/813749953910730752
http://bit.ly/2htArcb