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今回の原油先物の反動は少し注意すべき!日本の長期金利が暴れるリスクが

原油先物は5月6日に62ドル台を付けて日銀が想定した70ドル台に向けて順調に値を戻しつつあるように見える。原油価格はある意味、売られすぎており、その反動が起きているといえるが、今回の原油先物の反動は少し注意すべきものとなる。

ここにきて各市場のトレンドに変化の兆しが見えてきている。特に顕著なのがドイツを初めとする国債利回りの低下が止まり、急激な反動が起きていることである。欧州のデフレ懸念、それに対処するためのECBの量的緩和を意識しての、ドイツなどの国債買い、ユーロ売り、さらに景気減速も背景とした原油先物の売りを同時に仕掛けていたヘッジファンドなどがあったとしてもおかしくはない。金利はゼロがひとつの壁となっていたが、そこを突破すれば無限大となる。ドイツでは9年債の利回りまでマイナスとなっていた。市場はみんなで渡れば恐くない世界であるが、気がついたらとんでもないところまで来てしまい、一斉に安全なところに戻ろうとする。そんな巻き戻しが発生し、ドイツの金利が反転し、ユーロが買われ、株は下落し、原油価格は反発した。

これが日本にどのような影響を与えるのか。ECBの量的緩和もあり、海外投資家はドイツなどに比べて相対的に高くみえた日本の債券も大量に購入してきた。しかし、ドイツの長期金利が日本の長期金利を上回るようなことになると、日本の国債が割高に見えることになる。日本の国債市場を支えていたのは日銀の国債買入に見えたが、それはあくまで支えているものであり、海外投資家が買いから売りに転じれば、当然ながら日本の国債も無傷ではいられない。

そんなときにイエレンFRB議長が、米株式市場に関して、一般的に言うととても割高との認識を示し、長期金利は非常に低い、利上げを始めた場合に長期金利が急激に上がる可能性に注意を払う必要がある、と指摘したことは非常にタイミングが悪かった。経済データ次第ではあるが、FRBの年内利上げの可能性は高い。利上げとなれば、現在の米国の長期金利が低すぎるとの認識を中央銀行のトップが警告を発した。ドイツの長期金利の反騰のタイミングで、米長期金利の上昇要因が加わった。こうなると日本の長期金利もかなり低すぎるということにもなりかねない。原油価格の上昇も加われば、日本のCPIも底打ちしてくる可能性もある。2.0%に届くかはさておき、多少なり前年比のプラス幅が大きくなれば、日銀の出口が意識されることも予想される。

日本の長期金利の低位安定は、日銀の大量の国債買入も確かにひとつの背景だが、それだけで相場が支えられるものではない。欧米の長期金利の低下も大きな要因であったはずであり、原油価格下落による日銀の物価目標達成の先送りも、日本の長期金利の低下を促していた。このあたりのシナリオの前提が崩れてくる可能性が出てきた。物価目標はさておいて、日本の長期金利が暴れてくるリスクが出てきている。

牛さん熊さんの本日の債券』(2015年05月08日号)より一部抜粋

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