「消費税10%」の何がヤバいか?
なぜなら、「10%」になれば消費税分の計算が著しく簡単になり、消費税の「心理的負担感」が格段に大きくなることが危惧されるからです。
まず、3%や8%等の場合には、消費税の金額の計算は少々「ヤヤコシイ」ため、面倒くさいから「消費税分は切り捨ててゼロだ」と見なして買い物をしていた人が少なからず居られたはずです。そういうケースにおいては当然、消費税が課せられていても、買い控え効果はあまり生じません(注:心理学では認知的負荷が多い場合は、情報処理の合理性が低下することが知られています)。
ところが10%になればそういうケースはほとんど考えられなくなります。「価格の1割」という計算は、著しく簡単だからです。そうなれば、計算のヤヤコシサゆえに今まで消費税分を十分に考えてこなかった消費者たちも皆一斉に、消費税分の計算を始めることになります(つまり、認知的負荷が激減するので、消費者行動の合理性が跳ね上がるのです)。
結果、「10%増税」は、これまでとは比較にならないくらい大きなインパクトを消費者に与え、消費が激しく縮退してしまうことが危惧されるのです。
5%→8%よりも、8%→10%の方が影響は大きい
当方はこの可能性を実証的に確かめるために、心理実験を行ったのですが――誠に残念なことに、当方のこの危惧を明確に実証する結果が得られてしまいました。
実験の結果得られたデータを統計分析したところ、「10%への2%増税」は、これまでの「1.4倍もの消費縮退効果」を持つことが示されたのです。
このことはつまり、2014年の8%増税よりも今回の10%増税の方が(その増税幅は2%に過ぎぬとしても)、「10%になる」ということそれ自身が原因で、より大きく消費を縮退させることを意味しています。
特に女性の買い控えが加速する
しかも男女別に分析をしたところ、その「10%増税の特別効果」は、女性において凄まじく顕著であることも示されました。女性にとっての「10%」の特別効果は、これまでの実に「2.9倍」にも達することが示されたのです。
このことはつまり、女性は概して、消費税が10%になった途端に、激しく「買い控え」をしはじめることを意味しています。
こうした結果を踏まえるなら(各推計値については追試等を重ね、精緻化を図ることも必要ですが)、10%増税がこれまでとは「次元」の異なる巨大な「消費縮退効果」を持つことそれ自身については、理論的にも、実証的にも、否定しがたいものと考えざるを得ません。