26年ぶりの公募増資発表で株価が急落したソニー。資金はCMOSイメージセンサーの生産能力増強などに充当する予定ですが、はたしてその成算は?大手証券に勤務しながら、メルマガ『株式投資図鑑』を発行する小浜研二氏が分析します。
ソニーの公募増資に参加するべきか?
6月30日にソニー<6758>が約3,200億円の公募増資と1,200億円のCB(転換社債)の発行を発表した。これを受け、同日の株価は8.3%下落している。
イメージセンサーへの投資
公募増資で重要なのは資金使途、つまり増資したお金が何に使われるかだ。今回ソニーは積層型CMOSイメージセンサーの生産能力増強や研究開発費に充当するとしている。
以前の投稿でも触れたが、苦境にあるソニーにとってCMOSイメージセンサーは数少ない「ものづくり」としての強みだ。技術力は高く、iPhoneをはじめ世界のスマホの約半数に搭載されている。強みを持つ技術に積極的な投資をすることは正しいことのようにも見える。
アップルの下請け?
しかし、本当にそれでいいのだろうか。かつてウォークマンを世界に先駆けて発売したソニーが、皮肉なことにウォークマンの市場を奪い取ったアップルへの部品供給会社になりつつある。
中小企業だったらこれでいいかもしれないが、ソニーほど図体の大きな会社が部品への一本足打法をしていてはもたない。
また、スマホの需要の伸びも鈍化してきている。市場を牽引する中国でのスマホ普及率は9割に達し、1~3月の中国のスマホ出荷台数は6年ぶりのマイナスに沈んだ。もはやここから急激に生産が増加するような状態ではないだろう。
エレクトロニクス分野でソニーが復活するには、ウォークマンなどのイノベーションを再び起こし、顧客に価値を与え続ける必要がある。そのためには、アップルの下請けではなく、再びアップルを凌駕しなければならないはずだ。
イノベーションを起こすには常識から外れた人材を獲得するか、研究開発を強化しなければならないが、残念ながら今回の増資ではそのことについてはあまり触れられていない。
どっちつかずのソニー
一方、エレクトロニクス分野と違い、金融やエンターテイメントなどの非エレクトロニクス分野は好調が続いている。エレクトロニクスから離れ、こちらに集中するというのも選択肢としてはありだと思う。しかし、今のソニーはどっちつかずだ。
今期の純利益見通しが1,400億円とのことだが、それで時価総額4兆円はPERで30倍にもなり、高すぎるだろう。イメージセンサーはうまくいっても数千億の純利益が積み増されるような事業ではない。
僕はソニーの公募増資への参加は見送ることをおすすめする。
【 ソニー<6758> 】
業績予測度 ★★☆
成長度 ★☆☆
割安度 ★☆☆
『株式投資図鑑の銘柄情報』(2015年7月2日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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