財務省は何を書き換えたのか?
書き換え前と書き換え後の文章を見比べると、森友学園へ国有地に売却した過程で登場する人物に関する記述がすべて消されています(その意味では、読売新聞の「削除」という表現が最も適切なのか!?)。
書き換えまたは削除された部分は14の文章で合計78ページ、およそ310ヶ所にのぼります。消された人物は以下の通りです。
- 安倍晋三首相
- 安倍昭恵氏(安倍晋三首相の妻)
- 麻生太郎財務相
- 鴻池祥肇氏(自・参、元防災担当相)
- 北川イッセイ氏(自・元参、元国交副大臣)
- 故・鳩山邦夫氏(自・元衆、元総務相)
- 中山成彬氏(希・衆、元国交相)
- 三木圭恵氏(維新・前衆)
- 平沼赳夫氏(自・元衆、元経産相)
- 杉田水脈氏(自・衆)
- 上西小百合氏(元衆)
書き換え前の文章は多くの政治家が登場しており、財務省や近畿財務局が森友学園と政治家などとのつながりを強く意識していたことが伺えます。しかし、文章の書き換え(改ざん、削除)によって、登場する人物は全員、削除されてしまいました。
通常、この手の決裁文書に政治家の名前が載ることはないそうです。森友学園への国有地売却は財務省の中でも特殊な案件だったのでしょう。
そして、消された文章の中で、特に重要だと思われる内容(要約)は次の通りです。
<1>
森友学園から言いなりで、「土地を国が森友学園に貸しその後に買う」という前例のない契約形態を受け入れた。
<2>
国が損害賠償請求をしないと森友学園に約束した。
<3>
鑑定評価も価格設定も森友学園側の希望を受け入れるとした。
そして、これらをまとめて、「特段定めのない特例的な処理となる」(⇒もちろん、この文章も削除された)という文言で表現されています。
やはり森友学園への国有地売却は特例だったのです。
元々「三権分立」に反していた森友学園案件
この森友学園案件に関して、最初から内閣が国会に介入していて、財務省が国会に提出する資料を制限してきました。これは立法、行政、司法の三権分立を崩壊させる行為です。
我が国では残念ながらこの三権分立が機能しておらず、財務省は元々、森友学園問題に対してまともに向き合ってきませんでした。詳しくはこちらの動画をご覧ください。
財務副大臣が「与党が許可しない資料は出せない」とさも当然のことのように主張しています。
4つの仮説から森友学園問題を考える
なぜ財務省は森友学園に国有地を売却する際、約8億円の値引きを行ったのか? 今の所、はっきりとした真相はわかっていません。メディアに出回っている情報をまとめると、概ね次の4つの仮説に集約できると思います。
<仮説1:籠池氏がすべて悪い説>
籠池氏(森友学園の元理事長)が格安で国有地を買い取るために、近畿財務局を不当にゆすった。
<仮説2:佐川氏がすべて悪い説>
佐川氏が暴走して森友学園に関係する決裁文書を改ざんするように指示した。森友学園との取引について、政治家は何も知らないし何も関与していない。
<仮説3:財務省忖度説>
財務省は安倍首相や昭恵夫人に忖度して、森友学園へ国有地を大幅に値引きした。
<仮説4:昭恵夫人が関与していた説>
森友学園の教育理念に共感していた昭恵夫人が、財務省に何らかの働きかけを行った。
仮説1⇒2⇒3⇒4の順番で、安倍政権へのダメージがより大きくなります。安倍政権にとって最も望ましいのは、仮説1で食い留めることでした。しかし、今回、「決裁文書の書き換え」が明らかになったことによって、仮説2、3と真剣に向き合わなければいけない状況になっています。
野党としては、仮説4に踏み込んで検証したい所ですが、与党は昭恵夫人を証人喚問にかけることを拒否しているという構図です。
仮説1~4について、ひと通り検証していきます。