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ギリシャ・チプラス首相は「亡国の首相」になってしまうのか?

ギリシャとEUは7月13日に金融支援を再開することで基本合意しましたが、そのための条件に緊縮措置を伴う法案の法制化があります。そしてその期限は15日中。果たして法案は通るのか注目が集まるところですが、これを受け、作家の三橋貴明さんは、法案が議会を通ることでギリシャは財政や国有財産の管理に関する主権を完全に失うことになると語ります。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年7月15日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

緊縮措置を伴う法案は議会の承認は得られるのか?

先週、ジェフリー・サックスやトマ・ピケティ、ダニ・ロドリックら著名経済学者たちが、メルケル独首相への公開書簡を発表し、対ギリシャの緊縮財政を見直すように求めました。書簡では、緊縮こそが、「ギリシャで大量の失業と金融システムの崩壊を招き、債務危機を深刻化させた」と、批判しています。ついでに、ピケティはドイツ誌のインタビューに応じ、ドイツが第一次世界大戦、第二次世界大戦後の債務弁済が滞った史実を指摘した上で、「ドイツは対外債務を返済しない国の代表国で、他国を戒める立場にない」と、痛烈に批判しました。

ギリシャ支援で原則合意 ユーロ圏、15日まで法制化条件に
ユーロ圏19カ国は13日、ブリュッセルで開いた緊急首脳会議で、財政危機に直面するギリシャへの金融支援の再開について条件付きで合意した。ギリシャが15日までに増税や年金改革などの主要な財政法案を議会で可決すれば、3年で820億ユーロ(約11兆円)超の支援実施に向けた手続きに入る。ギリシャがユーロ圏から離脱する最悪のシナリオは当面、避けられる見通しとなった。(後略)

ドイツのメルケル首相は、合意後に、「信頼を再構築する必要がある。ギリシャ当局は合意した内容に責任を持たなければならない。今後のことは、合意された内容が一つ一つ実行されていくことにかかっている」と、語りました。
ドイツ第四帝国の女帝陛下のお言葉でございますね。

チプラス首相は条件受け入れと引き換えに、3100億ユーロのギリシャシムの減免(ヘアカット)を求めましたが、受け入れられませんでした。

また、チプラス首相は債権者団が求めていた、「アテネを訪れる代表団が閣僚にある権利」と、「関連法案に拒否する権利(債権者団が、という意味)」に強く反発していましたが、屈してしまったようですね。ギリシャの主権は、今後は「事実上」債権団が持つことになります。

ところで、ギリシャのチプラス首相は、果たして女帝や債権団に「屈服」したのか。それとも、国民投票を実施する前から、このシナリオが描かれていたのか。

分かりません。
分かりませんが、合意内容を見る限り、事前のシナリオのままとしか思えないのです。今にして思えば、国民投票直後にギリシャのバルファキス財務大臣が辞任したのも、シナリオの一部だったように思えます。

新聞報道によると、ギリシャ-ユーロの合意は、主に以下の通りとのことです。

  • ギリシャは15日までに、議会で増税や年金改革などの財政再建策を法制化
  • ギリシャは500億ユーロ規模の国有財産を、民営化基金に売却。債務返済や銀行への資本注入に活用
  • ユーロは総額820億~860億ユーロのつなぎ融資実施
  • ユーロはESM(欧州安定メカニズム)を活用してギリシャ支援
  • ユーロはギリシャの投資促進を支援
  • 債務削減をしない代わりに、返済期間延長は検討

これが本当にギリシャ議会を通ってしまったら、冗談でも何でもなくギリシャは「国家主権」を失い、チプラスは「亡国の首相」になってしまいます。
当然ですが、チプラス首相が党首を務めるSYRIZA(急進左派連合)は、首相の判断に猛反発。SYRIZAの左派や連立相手の独立ギリシャ人党は、チプラスが受け入れた案に反対することを示唆しています(そりゃ、そうでしょ)。

というわけで、決着は15日のギリシャ議会に持ち込まれました。SYRIZAの一部と独立ギリシャ人党が反対に回ると、チプラス首相は野党に頼らなければ法案を通すことができないことになります。

そして、法案が議会を通ってしまうと、ギリシャ人は財政や「国有財産の管理」に関する主権を完全に失うことになります。
わたくし達は今、国際協定と「おカネ」の力により、国民投票の結果すら覆し、一つの国家が失われていく光景を目撃しているのです。

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