イランでは疲弊した市民による講義デモも…
一方、イランのロウハニ大統領は「米国は世界で孤立している。イランへの制裁復活を後悔するだろう」と強く反発しています。
しかし、イランでは通貨リアルの暴落で物価が高騰しています。生活苦にあえぐ市民の抗議デモが各地で相次ぐなど、混乱しているようです。
イラン指導部は、制裁を機に批判の矛先がイスラム革命体制にも向かう事態を警戒し、抑え込みに躍起になっているとされています。
また、反米の保守強硬派を中心にロウハニ師の責任追及を求める声が高まっており、政治的にも混乱しつつあります。
11月の制裁強化に向け、さらに緊張が高まっている
今回の制裁に続いて、米国は11月にはイランとの原油や金融取引へ強力な制裁を科す予定です。
イラン政府は国内生産の強化など「抵抗経済」を標ぼうして逆風を乗り切ろうとしているようですが、エネルギー関連産業に深刻な打撃が及べば、社会のさらなる混乱は避けられないでしょう。
このような状況であることから、イランはペルシャ湾で大規模軍事演習を実施し、原油輸送路の要衝・ホルムズ海峡の封鎖も示唆して威嚇を続けています。
機雷敷設など航行の妨害行為で、米国や国際社会との緊張が一段と高まりかねない状況です。
イランは「核」にまでに手をかけている
また、イランの最高指導者ハメネイ師は、「欧州諸国がイランの経済利益を保証しなければ、核兵器に転用可能なウラン濃縮再開に踏み切る」とけん制しています。
核関連活動を強化すれば、中東で覇権を争うサウジアラビアなどへ「核のドミノ」が波及し、中東の混迷に拍車が掛かる恐れも出てきます。
こうなると、ますます原油市場の不透明感が高まるでしょう。実際に何かが起きるとは考えていませんが、市場心理が原油相場を押し上げる可能性は十分にあります。
EUも「イラン離れ」を阻止できない…
一方、トランプ政権によるイラン制裁の一部再発動を受けて、EUは7日にイランと取引する欧州企業を保護する対抗策を発動しました。
米国の合意離脱後もイランを核合意に残留させるため、経済関係の維持を図ることを目指しますが、欧州の大企業には既にイラン撤退の動きが相次いでおり、EUには手詰まり感もあります。
この対抗策は「ブロッキング規則」と呼ばれ、原則として欧州企業に対し米国の制裁に従うことを禁じるものです。
また、制裁による損失補填を米国側に請求することを企業に認め、制裁に関するEU域外の司法判断を域内では無効と見なします。
ただし、規則は過去に発動例がなく、効果には不透明さがあります。
一方で、仏石油大手トタルや仏自動車大手PSAグループ、デンマークの海運大手APモラー・マースクなどが既に撤退を表明しています。
米国市場と関わりが深く制裁への懸念が強い多国籍企業ほど、イラン離れを防ぐのは容易ではない状況です。
イランは核合意による制裁解除で得た経済利益の保護を合意残留への条件として要求しており、欧州側は対応に苦慮しているようです。