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日米貿易協定は本当にウィン・ウィンか? 安倍とトランプの友情は1年後に決裂する=近藤駿介

日米間で交わされた「Good deal(良い取引)」とは?

11月6日に中間選挙を控えるトランプ大統領にとって、安倍総理にFTA交渉をTAG交渉であるという詭弁を弄する余地を与えることで、日米共同声明の中に「TAGの議論が完了した後、他の貿易・投資の事項についても交渉する」という文言を入れて今回の交渉がFTA交渉であることを明確にするとともに、米国内の有権者にアピールできる「米国は自動車について、市場アクセスの交渉結果が自国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものである」という一文を入れたのは、「Good deal(良い取引)」であったに違いない。

一方、これまで自動車関税と農産物輸入問題を抱えて二国間のFTA交渉に引き摺り込まれることを拒んできた安倍総理にとっても、「日米両国は信頼関係に基づき議論を行い、協議が行われている間、この共同声明の精神に反する行動を取らない」という一文を入れる成果を得ると同時に、来年夏に参議院選挙を控えるなか、国内向けに「TAGとFTAは全く異なる」と詭弁を弄する余地を残すというのは「Good deal」だったに違いない。

日米首脳会談でこうした「Good deal」が成立したのは、お互いが間近に迫った選挙に向けて「政治的成果」をアピールする材料を欲していたからである。

「政治的成果」をアピールしたい両首脳

9月16~19日にウォールストリートジャーナルとNBCが共同で行った世論調査では、「民主党主導の議会を望む」有権者が52%であったのに対して、「共和党が主導の議会を望む」有権者は40%と、共和党は民主党に12%のリードを許している状況にある。しかし、「トランプ政権の経済政策に満足」と答えた有権者は実に69%に上っている。

このように11月6日に中間選挙にむけて「経済政策」が命綱になっているトランプ大統領にとって、対日貿易交渉で「日本にFTA交渉を認めさせた」というさらなる「成果」は有権者にアピールする材料として必要不可欠だったといえる。

一方、安倍総理は「協議が行われている間、この共同声明の精神に反する行動を取らない」という文言で「自動車関税の引き上げ回避」という「成果」を得ることに成功した。TAG交渉は約2年かかるといわれており、来年夏の参院選後まで自動車関税引き上げを先送りできるのはほぼ確実な情勢となり、参院選に向けての大きな懸念材料を取り除けることになった。

「為替条項」の先送りにも成功

今回、「自動車関税引き上げ回避」という大きな成果をあげることに成功した「TAG」という目くらましは、通貨安政策を禁じる「為替条項」の議論を先送りにするという副産物も生んだ。

これまでトランプ大統領と二国間の貿易交渉を行った韓国もメキシコも飲まされた「為替条項」を回避できたことは、今回の日米交渉における影の成果だったといえる。

安倍総理が異次元の金融緩和の「出口」について言及し始めたなかで「為替条項」の議論が加わってくれば、為替市場で円高圧力が高まることは十分に考えられたことである。FTAをわざわざ「物品貿易に関するTAG」と「他の貿易・投資の事項」に分けたことで、円高圧力が高まる危険性が回避できたのだとすれば、日本的な姑息な手段にも効能があったということになる。

Next: 安倍・トランプの友情は来年夏まで? やがて米国は牙を剥く…

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