ビッグコミック誌で好評連載中の『ゴルゴ13』に、日本の国債市場が登場しました。「私も少しだけ関与しているが、どのようなストーリーとなっているのかは知らされてはいない」という金融アナリストの久保田博幸氏が、前編の見どころや、脚本を書いた方から聞いたウラ話を紹介しています。
「日本の国債市場で何かが起こる」この物語は本当にフィクション?
ゴルゴ13は誰に依頼され、誰が標的になるのか
先日発売されたビッグコミックのゴルゴ13の舞台は日本の国債市場である。
まだ前編の段階で、肝心のゴルゴ13も登場していない。しかし、物語はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で暗躍した女性スナイパーが、米国の大手債券ファンドの敏腕ファンドマネージャーに転身し、日本国債をターゲットにすることになるあたりまで描かれている。
ここにはIMFの高官が女性ファンドマネージャーと共謀している悪役として描かれており、IMFも何かしらで関与してくる可能性がある。
日本の様子も描かれており、国会で日銀の大量の国債買入に対して財政ファイナンスではないかとの野党からの追及に対して高津財務大臣は、日銀は直接、政府からではなく、国債市場から国債を買っているので財政ファイナンスには当たらないと発言している。国債が暴落する可能性については、そのような仮定の話には答えられないとも。
このあとのシーンには黒沢日銀総裁から財務大臣に電話が掛かってきた様子が描かれている。ここで財務大臣はこんな発言をしていた。
「国債市場が、機能不全になっている事を忘れるな。秀才の君は理詰めで事を進めるが、まさかの事態にも目配りしたほうがいい」
それに対して日銀総裁は「日銀に喧嘩を売るゴジラは現れませんよ」と切り返していた。
前編だけでは、このあと日本の国債市場で何が起こり、ゴルゴ13は誰に依頼され、誰が標的になるのかもわからない。しかし、日本の国債市場が大きく揺れ動くであろうシーンが描かれることが予想される。
脚本執筆のウラ話
このゴルゴ13の脚本を書いた方は、このようなことを指摘していた。「絶好の投資タイミングは悲観が頂点に達した時」という、第二次世界大戦における逆張り株式投資で莫大な利益を得た世界有数の資産運用会社の創立者の一人であるジョン・テンプルトン卿の言葉を新聞で見て、日本国債に関わるものを書いてみようと思ったと。
もちろん日本国債に関しては反対の逆張りとなる。「絶好の売りタイミングは楽観が頂点に達した時」と。
現在の日本の国債市場で楽観が頂点に達しているかどうかはわからない。しかし、財政ファイナンスに近い政策を日銀が打ち出しても、その揺らぎは2013年4月5日のわずか1日で終わった。
その後の長期金利の超が付くほどの低位安定ぶりをみても、日銀の国債買入があるからと、市場には楽観的な様相が広がっていることも確かではなかろうか。
ゴルゴ13はもちろんフィクションである。しかし、フィクションであるからこそ仮定の話が書ける。その仮定のなかで、いったい日本の国債市場で何が起きるのか。10月19日には債券先物が30周年を迎える。あくまで物語の上ではあるが、その債券先物と現物債の市場に波乱が起きそうである。
今回のゴルゴ13には私も少しだけ関与しているが、どのようなストーリーとなっているのかは知らされてはいない。
『牛さん熊さんの本日の債券』(2015年9月30日号)より一部抜粋
※タイトル、見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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