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下院敗北はトランプの狙い通り。経済政策の激化と、確実になる2年後の再選=近藤駿介

「ねじれ議会」はトランプと民主党の双方に好都合

むしろ、対中国を中心とした貿易問題に関しては、中間選挙の結果、共和党が上院を抑え、民主党が下院を抑えるという「ねじれ議会」が生れたことは、トランプ大統領、民主党双方にとって好都合だと考えるべきかもしれない。

上院を抑えた共和党の利点は、政府の人事権を抑えたことと、下院を民主党に抑えられたことによってトランプ大統領がこれまで通り、あるいはこれまで以上に外交・通商交渉で強硬姿勢を強めても自然の流れだと見做されやすいことである。

一方、下院を抑えた民主党は全ての委員会の人事を握ることで内政を中心に主導権を握り、スキャンダルなどでトランプ大統領を追い込むことが可能になった。それと同時に、それによってトランプ大統領を議会の権限が及びにくい外交や通商問題でより強硬姿勢を取って行くように仕向ければ、国際社会からの保護主義的という非難をトランプ大統領に担わせながら民主党の目指す方向に事態を近づけることが出来ることになる。

日米物品貿易協定(TAG)の交渉はより厳しくなる

今回の中間選挙の結果生じた「ねじれ議会」は、2019年1月から始まる米国議会から反映されることになる。そして2019年1月からは日米物品貿易協定(TAG)交渉がスタートする。

日本では安倍総理の「FTA(自由貿易協定)とは全く別物」という「イナダとブリは全く違う」というごとき詭弁が罷り通っているTAGだが、トランプ政権がこれまでまとめて来た韓国、メキシコ、カナダとの通商交渉全てに「為替条項」が入れられていることからも明らかなように、日本との貿易交渉で「為替」を絡めてくることは想像に難くない。

そこで忘れてならないことは、米国は為替報告書のなかで日本を「監視リスト」に指定していることである。そして、日本を「監視リスト」に指定したのはトランプ政権ではなく、オバマ政権下の2016年4月であったことである。

つまり、民主党が下院の過半数を握り「ねじれ議会」になったことで、貿易交渉においてトランプ政権の強硬姿勢がおさまることには期待できない。もともと民主党は日米貿易不均衡に不満を抱き、日本を「為替監視リスト」に指定したのだから。

米経済の拡大を維持するのはさすがに難しい

2020年の大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領は、今回の中間選挙の結果「ねじれ議会」が生じたことを歓迎すべき事態として受け止めているかもしれない。

それは、減税の効果は剥げ落ちて行くことや当面FRB(連邦準備制度理事会)が漸進的利上げ政策を継続する可能性が高いことなどから、この先米国経済の成長が鈍化するのは避けられない状況にあるからである。

米国の戦後の平均的な『景気拡大』局面が5年であるのに対し、2009年7月から始まった現在の米国の景気拡大局面は10年目に突入し、1991年4月から2001年3月までに次ぐ戦後2番目の長さになっている。

失業率が48年ぶりに3.7%まで低下し完全雇用状態にある状況で、さらにあと2年間経済を成長させ続けて2020年の大統領選挙を迎えることは「トランプマジック」を使ったとしても容易いものではない。

Next: トランプは「ねじれ議会」を歓迎? 経済鈍化の責任を一人で負わずに済む…

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