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矢口新の相場観=安倍政権・日銀は大規模な公共投資と追加緩和を行うか?

元為替ディーラーで、ベストセラー『生き残りのディーリング』著者の矢口新氏が、有料メルマガ読者の質問にズバリ回答。この記事では、アベノミクスの命運を握る大規模な公共投資と追加緩和の有無について取り上げた回を限定公開します。

【新3本の矢】政府・日銀は大規模な公共投資と追加緩和を行うか?

メルマガ読者の質問

アベノミクスに新たな3本の矢が出てきて、GDP目標が600兆円とされました。それに加え、11月に郵政3社の上場も控えた状態で、政府・日銀はなにか大規模なことを発表するのではないでしょうか?

矢口新氏の相場観

新たな3本の矢として「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を経済政策の柱としたのですから、政府は相当の歳出拡大を意図していると思われます。

「強い経済」は、民間の活力や外需によっても可能ですが、それらは政府の経済政策で約束できるものではありません。ここで政府ができることは、大量の資金供給、公共投資の拡大、減税といったものです。

また、経済政策による「子育て支援」「社会保障」の充実には、相当の財政予算を充てる必要があるでしょうから、首相の言葉が本気なら、どれをとっても歳出拡大が避けられないとみていいでしょう。

減税については、過去は消費税率を上げながら法人税率を下げてきましたが、結果的には税収減となったばかりか、名目GDPですら頭打ちとなりました。これらの教訓を政府が活かし、GDP目標を600兆円とするのなら、消費税率を3%以下にする必要があると私はみています(※マネーボイス関連記事)。

消費税は売り上げを天引きする形となりますので、経済が回らなくなるのです。経済成長を阻害しないという意味では、利益や所得に課税するのが正しいやり方です(※安倍首相の夢は、消費減税でしか叶わない! – 矢口新[PDF])。

量的金融緩和とは、国債など証券を買い入れることにより、日銀が市場に資金を供給するものです。このことは裏を返せば、郵政3社の株式という証券の売り出しは、市場から資金を吸い上げる金融引き締めに相当することを意味します。

郵政3社は株の売り出しで計1兆3800億円程度を調達する計画で、政府の民営化案件としてはNTT以来の規模だとされています。新規上場企業が2014年1年間に調達した金額が約9800億円です。

市場が強気で新規上場を待ち望んでいる時なら問題ないかもしれませんが、現状のような株式市場の状態では、それなりの株価下押し圧力とみていていいでしょう。

そこで、「政府・日銀はなにか大規模なことを発表するのではないでしょうか?」とのご質問が出てくるのは、もっともな話だと思います。

GDPを600兆円にするには、誰が考えても、なにか大規模なことをする必要があります。安倍首相は同時に、2017年4月には消費税率を10%に引き上げると明言しましたので、歳入も歳出も拡大する、いわば大きな政府で、政府と官僚に任せていれば「強い日本」が再生されると信じているのでしょう。

私は政府と官僚の過干渉が、日本経済長期低迷の主因だと見ていますが、政府と官僚がそれを認めることはないと思います。つまり、これまでの大きな政府での失敗は、より大きな政府で取り返すと考えるのが、あり得そうなことです。

首相の言葉が本気なら、大規模な公共投資と追加緩和を期待していいかと思います。もしも、そういったものが出てこないのなら、首相は単に自分の夢物語をつぶやいただけの可能性が高まることになります。

【関連】安倍首相は歴史を変えられるのか?「GDP600兆円」後の経済シナリオ

相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2015年9月29日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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