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TPPで変わる中国。習近平による「貿易と産業の構造転換」が近づいている=田代尚機

「世界の工場」から、高付加価値な貿易・産業への転換を目指している中国にとって、TPPによる“経済のブロック化”は必ずしも悪いことばかりではない――TS・チャイナ・リサーチの田代尚機氏が解説します。

中国が貿易・産業の構造転換を加速する“動機づけ”としてのTPP

ブロック化の波が中国に与える影響は

日米など12ヶ国は5日、環太平洋連携協定(TPP)について基本合意に達したが、はたして中国経済への影響はどの程度なのだろうか?まず、具体的な数字から確認しておこう。

2015年1~8月までの累計データでみると、中国から12ヶ国に対する輸出比率は全体37.1%である。国別で見れば、中国の輸出先トップはアメリカであり、全体の18.1%を占めている。次は日本の6.0%である

ちなみに、中国メディアはEU、ASEANを1つの括りとして順位付けして発表するので、日本は第4位のような印象となっているが、実際には第2位である。経済規模の大きさ通りの順位となっている(ただし、ここでは中継貿易としての香港を除いている)。

この12ヶ国間で貿易の自由度が高まることで、中国のこれらの国への輸出が影響を受ける可能性がある。もう少し露骨に言えば、TPPにより、12ヶ国間において貿易のブロック化が進むとすれば、中国は当然その影響を受けることになる。

ダメージを受けるのは「低付加価値商品」の輸出

貿易収支の観点からみると、中国側の黒字は、アメリカ、ベトナム、メキシコ、シンガポール、カナダ、ブルネイの6ヶ国。この内、黒字額が圧倒的に大きいのはアメリカであり、中国における貿易黒字の45.7%を占めている。

中国はそのアメリカ向けに電器製品、衣料品、雑貨などを輸出しているが、こうした分野において、ベトナム、マレーシア、メキシコあたりは競合する。TPP加盟国間によるブロック貿易が進めば、中国におけるアメリカの貿易黒字は減少する可能性がある。

衣料品、雑貨などは既にASEAN諸国に生産基地が移っている。付加価値の低い加工組型の電器産業も同様である。

ただし、テレビ、スマホ、パソコンやそのほかの電子部品、電子機器産業については、中国国内や周辺国で、既に良質なサプライチェーンができている。こうした産業がTPPによって、短期間で空洞化する可能性は低いだろう。

中国が目指す貿易戦略は、電器製品、衣料品、雑貨など付加価値の低い製品を値段の安さを武器に、先進国、ASEANなどに大量販売するといったものから、鉄道インフラ設備、電力設備、化学プラントなどをアジア、EU、中東、アフリカ諸国に販売、同時に積極的に海外直接投資を行うといった形に転換しようとしている。

日本人投資家が注目すべきは、習近平による「貿易と産業の構造転換」

アメリカ(オバマ政権)がTPPを推進しようとする最大の狙いは、ブロック貿易をちらつかせながら、中国をTPPに引き込むことであろう。

つまり、中国の国家資本主義を修正させ、アメリカ型の自由主義に少しでも近づけることであろうが、たとえば、中国外交政策の支柱である一帯一路戦略などは国家資本主義そのものである。中国を変節させるのは難しい。

アメリカ型の自由主義を世界で実現するのも難しい。TPP基本合意は各国による妥協による産物である。各国が自国の産業を守りたいと願う気持ちを消し去ることは不可能である。

中国型の国家資本主義が相手国に要求するのは自由主義といったイデオロギーではなく、あくまで損得だけである。途上国にとっては受け入れやすい内容である。

そもそもTPP交渉に合意した各国の政府自体が、国内の議会を説得できるかどうかも分からない。それはアメリカも同じである。

TPPの基本合意は、中国に対して一帯一路戦略や、国内産業の構造転換、レベルアップを加速させる動機づけになりそうだ。中国にとってよい話である。

【関連】ウソだったTPPの経済効果。安倍政権の狙いは「環太平洋の軍国化」だ

中国株投資レッスン』(2015年10月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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TS・チャイナ・リサーチの田代尚機がお届けします。中国経済や中国株投資に関するエッセイを中心に、タイムリーな投資情報、投資戦略などをお伝えします。中国株投資で資産を大きく増やしたいと考える方はもちろん、ただ中国が好きだという方も大歓迎です。

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