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無茶なM&Aで太り過ぎたライザップ、赤字70億円からどう結果にコミットするのか?

M&Aのリスク

瀬戸社長は、赤字企業など経営の悪化した企業を買収してきました。割安企業ですからね。それが続くと、財務リスクは上昇することが考えられます。その懸念から、同社の買収戦略を“赤字企業の爆買い”と指摘する専門家もいました。

割安購入益計上は一時的なもので、将来にわたり成長(リターン)を伸ばしていくことが大事となってきます。その手腕が瀬戸社長には試されていました。

瀬戸社長のところには、金融機関や赤字会社から買収の話が引きも切らずに持ち込まれていたそうです。売上高と営業利益をかさ上げできる負の“のれん”を目当てに、M&A案件の評価が甘くなっていた面もあるという指摘もあります。

今回2019年3月期が赤字転落のきっかけとなったワンダーコーポレーションの再建計画は、在庫の評価損を計上したものの、音楽CDの不振は今に始まったことではなく当然予測できたはずだという厳しい指摘もあります。

積極的にM&Aを行ってきた2018年3月期の有利子負債は768億円、自己資本比率は16.3%でした。財務面での脆弱さは明らかで、買収した企業の再建が進まず、収益を上げられなければ、株価の下落や資金繰りの悪化につながりかねない状況にあったとされています。

買収した企業を再建できなければ、「負の資産」は「負」のままで、本業収益をも蝕んでいくことは明らかでした。

拡大路線を掲げた瀬戸社長は振り上げたこぶしを下ろせなくなっていた…。

市場関係者の見方です。瀬戸社長は、自分で事業拡大を「コミット」したことに縛られて、まさに振り上げたこぶしを下ろせなくなっていたのかもしれません。

業績下方修正後、株価は2日続けてストップ安を記録しました。本業での収益拡大やシナジー追求といった原点に立ち戻った経営ができるかが問われるとうのが、市場関係者のコメントでした。

そんな中、カルビーから救世主が現れたのです。

カルビーからの救世主

ライザップはおもちゃ箱のような会社で面白そうと思っていたが、いくつか壊れているおもちゃがある。今修繕しないと大きな問題になる…。

決算説明会に同席した松本晃COO(当時)の言葉です。

松本晃氏は、現在は構造改革担当代表取締役となっています。瀬戸健社長が師と仰ぐ、カルビーから招いた経営の「プロ中のプロ」です。

松本氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の社長を務めた後、経営手腕をカルビー首脳に見込まれて、2009年に会長兼CEOに就任。コスト管理を徹底しつつも、ドライフルーツが豊富に入ったシリアル『フルグラ』を大ヒットさせ、業績をV字回復させました。

松本氏は、創業者の松尾一族が、経営へ口出ししないというコーポレート・ガバナンス体制を整える条件でカルビーに参画。それまで11年間交渉してきた世界最大急の食品・スナック菓子メーカーのペプシコとの提携を成し遂げ、創業者悲願の上場まで果たしました。

松本氏は、北海道のジャガイモ大不作によるヒット商品「じゃがりこ」の危機を経験し、乗り越えてこられました。

もちろカルビー退任後、たくさんの企業から引き合いがありましたが、瀬戸社長の経営者としての将来性を見込んで、瀬戸社長を一人前の経営者にするためにRIZAPグループを選んだと言われています。

瀬戸社長が振り上げたこぶしを、上手に下ろしてくれるのが松本氏であり、その役目を瀬戸社長がじきじきにお願いしたからこそ、瀬戸社長は松本氏の言うことには素直に耳を傾けることができるのでしょう。

Next: 今後、どのようにしてRIZAPは再起をかけていくのか

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