消費増税でさらに生活が苦しくなることがわかっている今、投資を学び、自分で資産を増やすことの意義を考えたい。もはや国やプロ任せでは生きられないのだ。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)
※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年10月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
もう国や会社には頼れない。自分のお金と生活は自分で守る時代へ
投資を学ぶ必要はあるか?
私は、20代から60代まで一貫して相場に携わってきた投資経験と知識を皆さんにお伝えしている。投資の第一義の目的は、自分の力で収益を上げることだ。とはいえ、リターンを望めば、それ相応のリスクを取る必要がある。
果たして、そうしたリスクを取ってまで、自分でリターンを追求する必要があるのだろうか?また、そのためにコストをかけてまで学ぶ必要があるのだろうか?
そこで、皆さんに以下の質問を投げかける。ご自身もそう思っているのかどうか、考えてもらいたい。
<あなたは同意できるだろうか?>
- 日本は社会保障のシステムがしっかりしているので、国に任せていれば何があっても大丈夫だ
- 老後に頼る年金制度は、少子高齢化でも国の補助で安心だ
- 財政赤字は増税で解消される
- 日本はアメリカが守ってくれる
- 親方日の丸の公務員、または一流企業に勤めているので老後も安心だ
- 投信はプロが運用するので安心だ
そう思う人は、投資を学ぶ必要はないのかも知れない。それでも今回は、1つ1つの事柄を掘り下げながら、投資を学んで実践する必要性について解説したい。
(1)日本は社会保障のシステムがしっかりしているので、国に任せていれば何があっても大丈夫?
厚労省組合せモデル(平成27年度)では、40年間サラリーマンとして働いた夫(厚生年金第1号)と、専業主婦(国民年金第3号)を合わせた年金支給額は、月間22万1277円となっている。とはいえ、実際には満額を受け取る人は少ないので、現状受給者の平均は、14万7,872円+5万5,244円=20万3,116円だ。
しかし、この数値は年金支給額が減額になる前の受給者を含んでいる。今後、受け取る世代では、65歳から受給を開始して、この金額の約3分の2を受け取ることになる。
新規裁定65歳カップル平均:8万2081円+5万1891円=13万3972円
新規裁定60歳カップル平均:5万7458円+3万6324円=9万3782円
新規裁定70歳カップル平均:11万6555円+7万3685円=19万0240円
となる。
また、夫婦共に国民年金の場合は、厚生年金分の上乗せがないので、65歳カップル平均で5万1891円+5万1891円=10万3782円となっている。
2018年8月の現金給与総額は、1人平均27万6366円だった。この金額でも悠々自適とは行かないだろうから、退職後の生活を国からの支給額だけに任せていれば、相当厳しいものになるのは避けられない。また、今後は少子高齢化が進むので、この金額からさらに何割減になる可能性が高い。
そこで、政府は「生涯現役」を掲げ、現状の新規裁定の基準年齢を65歳から70歳に引き上げる画策をしている。年金制度の維持が目的なので、70歳引き上げ時の支給額は、現状の65歳時の支給額になるのではないか?そうなれば、その時に65歳から受給を始めれば、現状の割引率(年率7%)では夫婦平均で9万3782円となり実質的に大幅な減額となる。
ここに日銀が狙っているようなインフレが来れば、年金制度は年金組織のための制度となり、国民の生活を保証するものではなくなるのだ。