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いまは2000年「ITバブル」と同じ状況、あらゆる指標が景気のピークを示している=江守哲

来年は利上げ見送りか

米景気は7-9月の実質GDP伸び率が年率3.5%と、潜在成長率の2%弱を上回っています。インフレ率も目標に達しており、市場はFRBが政策会合で今年4回目の利上げを決めると見込んでいますが、今後は難しくなるでしょう。

米経済には慢性的な人手不足、対中制裁関税などでインフレ加速のリスクが潜む一方で、賃金などには明確な上昇圧力が出ていません

また、米中貿易戦争をめぐる不透明感、世界経済の減速傾向などが先行きに影を落とし始めるとの警戒感もあり、来年以降の利上げペースは確実に鈍化するでしょう。

場合によっては、来年は利上げ見送りの可能性もあると考えています。そうなれば、いうまでもなく、株価は下落に向かうことになります。

すでに景気はピークを達している

景気動向に先行する株価が、すでに景気のピークを示す指標が増える中、上昇基調を維持するのは難しいと言わざるを得ません。

ブレイナードFRB理事は、「緩やかな利上げが短期的に適切」としています。また、今後の政策運営は「より景気動向に左右される」とし、利上げの終着点が近づく中で、経済情勢の慎重な判断が一段と重要になるとしています。また、「米景気はきわめて強固」とし、「来年も堅調な成長を維持すると見込まれる良い理由がある」として、短期的には金融引き締めが望ましいとの認識を示しています。

ただし、今後は減税や好調な世界経済の追い風が減退するほか、貿易摩擦や英国のEU離脱に絡むリスクなどを踏まえ、「いくらかの逆風に直面するかもしれない」とし、「インフレ急加速の兆候もない」としています。

おそらく、この見方は正しいでしょう。

一方、セントルイス連銀のブラード総裁は講演で、「現在の金利水準は見通せる将来にわたって適切」としています。そのうえで、「次回のFOMCで利上げ決定を見送り、1月に後ずれさせることも可能」としています。

さらに、インフレ率などの経済データを使って、適切な政策金利を導き出す「テイラー・ルール」の有用性を指摘し、景気が巡航速度で推移した場合の金利水準である自然利子率が過去に比べて低下していることや、失業率とインフレ率の関係が薄れていることなどを考慮した新たなルールを示しました。

ブラード総裁は、「物価連動債相場から取り出したデータを使って推計したインフレ期待値に基づけば、金融市場は今後5年間、インフレ率がFRBの物価安定目標の2%に到達しないと見込んでいる」としています。

さらに、「こうした要素を反映させれば、政策金利を引き上げる理由は見当たらない」との考えを示しました。そのうえで、「現行の金融政策は帰路にある」と指摘し、これまで続けてきた緩やかな利上げのタイミングやペースを再考する段階に来ているとの認識を示しています。

ブラード総裁はFRB高官の中では利上げに消極的な「ハト派」であり、理論家のエコノミストとして知られています。今年のFOMCでは投票権を保有していませんが、来年は保有しています。「ハト派」の論客として、今後はFRBの政策運営に少なからず影響を与えることになりそうです。

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