オーナーは損するだけ
今のマーケットメカニズムは、空家を放置するインセンティブしか存在しません。
馬鹿正直に空き家を解体したら、数百万円も解体費用がかかり、さらに毎年の固定資産税も上がります。
誰がどう考えても、空家を解体する理由が見つかりません。
マーケットメカニズムが正常に働くのは、自分自身がその経済活動で「得」するからにほかなりません。
実行したら「損」をすることに対して、自ら積極的に動くというのは経済人として人間の本性に反することなのです。
結局、空き家は税金で解体するのが一番正しい理由
逆に、空き家を解体したら「得」する人たちはだれでしょうか?
それは、その空き家の周辺住民や、空き家の前面道路を通行する人たちです。積極的な「得」はしないけれど、事故などを未然に防ぐことができるという点では「得」といえます。
空き家問題は、費用負担する人と、その便益を受ける人が異なるということに大きな問題があるのです。
解体費用は持ち主、それですっきりして安全を確保できるのは、持ち主以外というところに問題があるのです。
通常、便益を受ける人が費用負担するというのが当たり前のことですが、空き家問題は便益を受けるのは他人で、費用だけオーナーが負担するという問題があるのです。
レストランでお金を払ったら、払った人がご飯を食べられるというのが普通の感覚ですが、
空き家問題では、お金を払っても、自分は食べられず、他人にご飯を食べさせてあげるような状態になっているのです。
「いやいや、所有者には解体もしくは安全を確保する責任がある」と声をあげる人も多いとは思いますが、義務を押し付けるだけでは、絶対にこの問題は解決できません。
というのも、先ほど述べたとおり、相続放棄などで所有権を放棄することができるからです。
であれば、現実的に考えて、便益を受ける(メリットを享受する)人である、周辺住民が費用負担して解体してもらうというのが、最も簡単に解決できる方法ではないでしょうか。
周辺住民を拡大していくと、行きつく先は税金で処理するということになります。
周辺住民だけでなくそのエリアでその物件の前を通行する人たち全員が安全を確保できるわけですから、税金で賄うというのは税金本来の使い方に合致するわけです。