米朝のすれ違いは演出
さて、上記の金委員長の施政演説では、条件付きながら3回目の米朝首脳会談に応じる用意があることが表明されました。
しかし、金委員長は「米国が正しい姿勢を持ち、われわれと共有できる方法論を見いだす条件で、3回目の首脳会談を行おうとするなら、われわれとしても一度はやってみる用意がある」としています。
ハノイでの2回目の首脳会談では何も成果がありませんでしたので、そのような意味のない会談は時間の無駄でもありますし、したくないというのが本音でしょう。
それはそうですね、当時は米国の混乱をごまかすために、無理やり実施したわけですから、最初から結論がない前提でしたので、仕方がないでしょう。
もっとも、いまのようも、米国が一方的に要求のみを押し付けるやり方への明確な批判を行っています。
独裁の金委員長からすれば、上からの押し付けの政策が体に合うわけがありません。まさに「体質的に合わず、興味もない」と不快感を示すのは当然でしょう。
いまの時点では、金委員長は「今年末までは忍耐心を持ち、米国の勇断を待ってみる」とし、期限を切って米国の出方を待つとしています。
しかし、米国側は完全な非核化実現までは制裁の緩和・解除はないという立場を堅持しています。
それに対して金委員長氏は、「わが国家と人民の根本利益に関連した問題では、わずかな譲歩や妥協もしない」と強調し、非核化や制裁問題で圧力に屈しない姿勢を重ねて表明しています。
このままでは、何も進まないでしょう。
もっとも、そのように演出しているのですから、あと1年程度は続くと考えておくべきです。
ポンペオ米国務長官を排除したい北朝鮮
また、最近目立つのが、北朝鮮サイドから出てくる「ポンペオ排除」の発言です。
ポンペオ米国務長官は、北朝鮮当局者がポンペオ氏との対話を望まないと発言したことに対して、「北朝鮮の非核化に向けて外交努力を続ける方針に変化はない」と強調しました。
これまで北朝鮮との関係構築に奔走してきたのがポンペオ氏です。CIA長官時代に何度も裏で北朝鮮を訪問し、金委員長との関係構築から米朝首脳解散の実現に向けて動いてきたのが、まさにポンペオ氏です。
しかし、さすがにやりすぎたのか、北朝鮮側からクレームが出てきてしまいました。
ポンペオ氏は「現在も北朝鮮との交渉チームを率いている」と強調し、「非核化の成果に到達するための真の機会がまだあると確信している」として、米朝協議の継続に前向きな姿勢を示しています。立場上はそう発言するしかないので、これを真に受ける必要はありません。
一方、北朝鮮側の発言が比較的地位の低い当局者のものだったことから、トランプ政権は静観する構えのようです。