本音は「トリクルダウンなんてあるわけない、負けた奴は自己責任だ」
そもそも、トリクルダウン仮説は民主主義国家において、一部の富裕層や法人企業に傾注した政策をする際、有権者である国民に「言い訳」をするために編み出されたレトリックなのです。
「富裕層や大手企業を富ます政策をやるけど、いずれ富は国民の皆さんに滴り落ちるので、安心してね」というわけでございます。
もっとも、トリクルダウンは別に民衆主義国の専売特許というわけではなく、中華人民共和国の鄧小平が改革開放を始める際に連呼した「先富論」も、まさにトリクルダウン仮説そのものでした。
つまりは、政治家がグローバリズム、新自由主義的な構造改革、緊縮財政を推進し、国民の多数を痛めつける際に「言い訳」として持ち出されるのがトリクルダウン仮説なのです。
竹中氏がトリクルダウンを否定したのは、構造改革を推進するに際し、国民に言い訳をする必要性を感じなくなったのか、あるいは言い訳するのが面倒くさくなったのかのいずれかでしょう。
「面倒くせえな。トリクルダウンなんてあるわけないだろ。政府の政策で、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧困化し、それでいいんだよ。どうせ、負けた奴は自己責任なんだから」
と、一種の開き直りで「トリクルダウンはあり得ない」と竹中氏が発言したと確信しています。
とはいえ、総理が「分配」と言い出したということは、竹中氏はともかく「政治家」にとっては、「トリクルダウンすらない構造改革、富裕層・大企業優遇政策」は、有権者に説明がつかないということなのだと思います。
「竹中氏がトリクルダウンを否定した。へ~え。つまり、あんた(国会議員)たちは富める者がさらに富み、貧困層はますます貧困化する政策を肯定するんだな?」という突っ込みを受けるのは、安倍総理とは言えどもきついでしょう。
2016年は、政治の季節です。安倍政権の構造改革、緊縮財政路線を転換させるためにも、本日と昨日のトリクルダウン関連のエントリーにおける「レトリック」をご活用下さいませ。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/1/7号より
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