思考実験──片づけるべき用事とは
『ジョブ理論』によれば、以下の問いに答えることで用事をより具体化できるようになる、としています。
1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。
2.苦心している状況は何か。誰がいつどこで何をしているときか。
3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。
4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。ジョブを完全には片づけてくれない商品やサービスに頼っていないか。複数の商品を継ぎはぎして一時しのぎの解決策をつくっていないか。
5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。
出典:『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(第2章 プロダクトではなく、プログレス)
用事の特定
イノベーションを起こすための最初のステップは、ある状況下で顧客がなし遂げようとしている進歩を特定することです。そして、その進歩には機能的、感情的、社会的側面があり、どれが重視されるかは文脈によって異なってきます。また、用事を特定することにより、真の競合相手もみえてきます。では、同社の場合はどうなるのでしょうか。
今回は、同社が対処すべき課題としてあげる「4D王の新分野への展開」を取り上げます。同社はそれを、次のように認識しています。
エモーショナルシステム事業においては、2018年9月期から事業の見直しを行い、再構築の途上にあります。遊園地系以外の分野への特殊3D映像によるVRメディアとしての市場の開拓と、科学館、博物館、防災施設、観光施設、シネコン、製造業の工場見学ルート、あるいは海外への展開を担う、分野別の販売代理店の確保及び育成に努めてまいります。
ここで着目したいのは、科学館または博物館の分野への特殊3D映像によるVRメディアとしての市場の開拓です。具体的には、小さなネズミの視点で自然を観察するのです。狙いは、子どもたちに自然科学への関心をもってもらうことです。
こういった状況で顧客──主に親子連れ──がなし遂げようとする進歩の機能的側面は「立体映像をみる」ということ。感情的側面として「娯楽」「魅力」「癒し」、社会的側面として「親子のつながり」といったことを重視するでしょう。
なお、同社は競合を次のように認識しています。
当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新とともに既存技術の陳腐化が早いため、他社との差別化を図るためには高い付加価値をもった製品・サービスが求められます。競合先が多数存在する中、プライベートクラウド構築技術・セキュリティネットワーク構築技術においては、長年クラウド構築に特化した事業を行ってきた当社ならではの、独自に蓄積した実装・コンサルティング能力、ノウハウや実績において他社に対し優位性を有していると考えておりますが、競合先の技術力等の向上により当社の競争力が大きく低下した場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。