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世界経済が「中国のV字回復」に期待できない理由 1~2月の景況を読み解く=田代尚機

頼りの「インフラ建設投資」も、景気の下支えが限度

こうして考えてみると、消去法で、鉄道建設や水利建設といったインフラ建設投資に頼るしかないということになるが、これらはここ数年平均より高い伸び率が続いている。ただし1・2月は、水利・環境・その他公共設備など(20.4%⇒26.6%)は加速しているが、鉄道建設が含まれる交通運輸・倉庫・郵政事業(14.3%⇒4.8%)などは減速している。

それぞれのウエートは、水利・環境・その他公共設備で9.2%、交通運輸・倉庫・郵政事業で8.6%に過ぎない。これらの投資の乗数効果は、短期的には不動産などと比べてずっと低いはずだ。やはり、財政出動などによるインフラ投資の加速では、せいぜい景気を下支えすることしかできないだろう。

消費の見通しは?伸び鈍化でも、国家統計局は「安定」を強調

小売売上高(11.1%⇒10.2%)については伸びが鈍化している。理由がはっきりしないのだが、前年末と1・2月のデータには毎年ある程度の段差がある。国家統計局は、その段差が前年(11.9%⇒10.7%)よりも小さくなっているから、今年の1・2月は安定していると強調している。

また、国家統計局は、実物商品の全国オンラインショッピングが全体の9.5%を占めており、それが25.4%伸びているとしている。確かにオンラインショッピングは全国レベルで急速に伸びている。しかし、イノベーションによる消費拡大効果は、店舗での売り上げ減少分と差し引いたうえで考える必要がある。

消費の見通しは、やはり個人所得の伸びによるだろう。月次ベースで有効な所得統計が見当たらないので予想しにくいのだが、今のところ各地方の最低賃金の上昇率が低いこと、今年の企業業績見通しは減益の可能性があることなどから、所得の伸びは鈍いだろう。消費は景気の下支え程度にしかならないだろう。

需要項目でもっとも厳しいのは「輸出」

2月の輸出(ドルベース)は▲25.4%、1月は▲11.2%で1月の▲1.4%と比べてひどく悪化している。

1・2月の累計でみると、全体は▲17.8%。
最大の輸出先であるアメリカ(全体のウエート:18.0% ※以下同様)は▲15.7%
EU(17.2%)は▲15.4%
中継貿易先の香港(12.2%)は▲13.1%
アセアン(12.1%)は▲24.8%
日本(6.5%)は▲12.2%

総崩れである。

Next: 世界経済の悪化が加速。中国による「景気刺激策」が期待されるが――

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