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世界経済が「中国のV字回復」に期待できない理由 1~2月の景況を読み解く=田代尚機

世界経済の悪化が加速。中国による「景気刺激策」が期待されるが――

中国は世界最大の輸出国であり、いろいろな分野の製品を輸出していることを考えると、世界経済の悪化が加速しているとみるべきであろう。この点についてもすぐに回復するとは予想し難い。輸入も大きく減少しているために「貿易収支」は比較的高い黒字水準を維持しているが、今後その黒字幅が更に高まるとは考えにくい。

こうしてみると、共産党・国務院がこのまま自然体で経済を放置すれば、緩やかな減速傾向が続きそうである。先進国では「中国政府」が景気刺激策を取ることを期待しているようだが、その可能性は低いであろう。

5日の政府活動報告(全人代)において発表された実質経済成長率の目標は6.5%〜7%で前年の7%前後、実績値である6.9%を下回っている。財政赤字については、赤字率(予算ベース)を昨年の2.3%から3%に引き上げており、積極財政を加速する見通しであるが、財政赤字額(予算ベース)は2兆1800億元で前年予算と比べ5600億元ほど増えているに過ぎない。

金融政策については、M2増加率を13%前後としており、昨年の12%前後よりは高いものの、実績である13.2%並みである。都市部新規就業者数について、目標は1000万人以上としており昨年と同じであるが、実績である1312万人を下回っている。

共産党・国務院の意向ははっきりしている。現在の成長率は適正の範囲であり、今年の政策の重点は「供給側改革」や長期の成長戦略としての広い意味での「構造改革」に置くということだ。

世界経済にとっては好ましくない状況が続く?今年の景気

今年の景気は減速傾向が続くだろう。時折、景気の急減速を抑えるための金融政策や産業政策などが行われるだろうが、景気はV字回復することはないだろう。

中国の輸入は減少傾向が続き、素材を中心とした輸出攻勢も続くだろう。残念ながら、世界経済にとっては好ましくない状態が続きそうだ。

ただし、強調して言いたい点は、これが中国が長期に渡り中程度の成長を続けるためにはベストの政策である。“成長率が高ければ高い方がよい”という考え方は間違っている。

株価について一言。企業業績についてはやや心配である。ただし、本土市場は需給や政策の影響を強く受ける。景気が緩やかに減速する中で金融緩和政策が継続され、長期の構造改革に絡む政策がたくさん出て来るだろう。また、業績不振企業の淘汰は、業界トップ企業にとっては買い材料となる。これらは株式市場にとって悪い話ではない。「景気減速」と「株式市場の動向」は分けて考えた方が良いだろう。
(3月12日作成、有料メルマガから一部抜粋)

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中国株投資レッスン』(2016年3月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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