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PERが高いときに買い、低い時に売るがなぜ正しい?好決算の銘柄に逆説が当てはまるワケ=山本潤

外部環境ひとつで業績は変わるうえ、会社は悲観的な予想をしがち

ベテランのアナリストといえば、その企業だけを何年も見ている専門家です。業績動向を知り尽くしているにもかかわらず、会社の計画を事前に当てられてないのです。なぜかといえば、外部環境の前提をひとつ変えただけで、企業の業績は簡単に変わってしまうからです。

市況産業の場合、市況の前提ひとつで業績の予想は変わってしまいます。たとえば、外部環境が良好である場合、業績は大幅な増益となるだろうとベテランアナリストは考えてします。しかし、往々にして会社は悲観的な予想で発表する場合があります。その場合、増益予想を期待して先回り買いをしたのにもかかわらず、実際の会社予想は減益予想だったということが生じ、株価は暴落してしまいます。外部環境がよいことよりも、実際の会社側の発表数字を投資家は信じる傾向が強いのです。ですから、会社発表が出るまでは、極端な思い込みは避けるのが無難なのです。

モメンタムの変化、つまり、増益率・減益率の「変化」を評価し、投資タイミングに活かすということは、これまで体系だって説明されてきませんでした。ただし、株の格言の中には同様のことをうたっているものがあります。たとえば、ベテランの株の営業マンの中には、こんなことをいう人がいます。「相場で儲けるコツ?普通の人と逆をやればいいんだよ。PERの高いときに買い、PERの低いときに売れば儲かるよ」などとしたり顔でいったりします。

「PERが高いときに買うべきだ」というパラドックス(=逆説)は、相場に関係する人であれば一度は耳にしたことはあると思います。PERの安いものを買って、高いものを売るというのが本来の投資の教えです。なぜ、こんな矛盾するような教えが市場には混在しているのでしょうか。それは、このモメンタムの変化のことを言い表しているからです。つまり、業績が悪いときは、収益低迷からPERは高くなります。一見、割高になるのです。

しかし、業績は底打ち、急回復することがあります。急回復過程で収益は戻り、PERは低下していきます。業績の変化率の大きな企業にとって、しかも、業績の循環性が高い企業にとっては、PERの高いときが業績の底打ち局面です。業績が循環する業種には、たとえば、半導体におけるシリコンサイクルや液晶におけるクリスタルサイクルなどがあります。サイクルがこれから上を向いて回復局面に入るとき、循環株は物色される傾向があるのは事実なのです。

株は循環的な性格を持ちます。どんな企業であっても、景気の循環の影響を多かれ少なかれ受けるからです。公共投資関連や食品などの生活必需品を扱う会社は、景気の波の影響を受けにくいのは確かです。

景気動向の影響が比較的少ない株をディフェンシブ株といいます。ディフェンシブの反対は、オフェンシブですが、株式市場では、オフェンシブ株とはいいません。景気動向を色濃く受けてしまう株のことを景気敏感株といいます。景気敏感株にしろ、ディフェンシブ株にしろ、景気動向の影響はどちらも受けるのです。

ただ、景気動向の影響を受ける度合いが大きい株を、シクリカル株、循環株、景気敏感株などといいます。機械株などの設備投資関連や商品市況などに左右される化学株や鉄鋼株も循環株です。

一方で、構造的な要因から景気動向の影響をそれほど受けないで成長している企業を、成長株といいます。また、景気がよくなっても不振から脱出できないような企業を衰退企業といいます。

ただし、衰退株という表現はなく、成熟株と呼びます。厳密にいえば、衰退と成熟は違います。しかし、衰退株というとその企業に失礼に当たるからなのか、成熟株と呼んでいるのです。

Next: 成熟株の株価の動きを予想するのは難しい、そのワケとは…

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