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PERが高いときに買い、低い時に売るがなぜ正しい?好決算の銘柄に逆説が当てはまるワケ=山本潤

景気の循環を正確に当てるのは難しい

成熟株とは成長性が低い企業です。成熟企業であっても、買収などを通して、規模を大きくしながら収益を成長させる手段が残されています。しかし、成熟企業の多くは、景気循環に大きく株価が左右される循環株です。循環株の中には、景気敏感株とディフェンシブ株とがあるという構造となっています。循環株のアナリストの仕事の一つは、企業の業績の循環、つまり、収益の動向を読み、株価を予想するというものです。構造的な要因から追い風が吹いている成長株の分析よりも、景気循環を当てる方がわたしは難しいと思います。

成長株は、構造的な要因があるため、企業の強みや参入障壁などを調べることである程度、将来の業績動向が把握できます。しかし、循環株は、業界における需給を予測しなければなりません。その循環をぴたりと毎回当てるアナリストに出会ったことはありません。そのぐらい循環を正確に当てるのは難しいことなのです。

たとえば、景気循環の流れ等を読むことで、相場の方向性を当てるのが仕事であるストラテジストという職があるのですが、彼らの中には、絶えず「買い」を主張する万年強気の人もいれば、逆に、何をいっても弱気のことしかいわない万年弱気の人もいます。いつも強気であれば、意見さえ変えなければ、いつかは当たります。目先の1-2年は運悪く弱気相場が来て外しても、3年目に強気相場がくれば、「ほら、自分の言ったとおりになった」と自慢できます。そして、「この人はいつも強気なんだよね」と世間的に「認知」されます。マスコミも、「この人はいつも相場に対して強気だ。強気の意見が聞きたいからこの人に取材しよう」ということになり、いつも強気であることが職業上有利に働くことさえあるのです。

証券会社のアナリストやストラテジストは人気商売ですから、当たる意見も重要ですが、彼らの目的は、当てることではなくて、高給の職業を続けることです。ですから、人々に受ける意見や人をけなす意見や逆に投資家を励ますような意見も言ったりするのです。つまり、説得力がある意見で「なるほど」と思わせれば目的は達成されます。

みなさんは、株を当てなければなりません。株を当てて儲けることが目的です。いつも強気な人がいる。いつも弱気な人がいる。ということは、専門家でさえ、循環を当てるのは難しいということの裏返しです。いつも同じ意見を言っていればいつかは当たるだろうという戦略も間違いではありません。首尾一貫していてよいともいえるのです。

逆に、もし、循環を当てるのが簡単だったら、ストラテジストという商売自体が不要になります。企業の業績がどのように変化しているかを短信から読み取り、素直にサポートしていくことで、業績変動の大きな波に乗って儲けることができます。

混乱させてしまいますが、わたしは「PERが高いときが買い」であるとは思っていません。正確には、「PERが高くても、投資判断が買いとなる場合もある」ということです。PERが高いから、即買っていいのであれば、これほど楽なことはありません。

image by:Alexander Sviridov / Shutterstock.com

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億の近道』(2019年12月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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