「トガッたテクノロジー」を投入してくるブランド
例えば、OPPOのFind 7では、実質5,000万画素で撮影できるカメラが搭載されています。カメラ自身は1,700万画素なのですが、シャッターを押すと自動的に10枚の写真が撮影され、これを人工知能で合成して5,000万画素の写真を生成します。
さらにOPPOでは、「5分の充電で2時間通話ができる」超急速充電技術を開発しています。
vivoも画面内指紋認証を搭載、小米は世界に先駆けてベゼルレス(フチなし)を実現するなど、中国のスマホメーカーは攻めに攻めてきました。「世界初」と呼ばれるスマホテクノロジーは大体OPPO、vivo、小米という中国の中堅メーカーが始め、それをファーウェイやアップルがより洗練された形で追従するという構造になっています。
日本では、いまだに「iPhoneに○○という新テクノロジーが搭載」と大きな話題になりますが、同様のものは数年前にこのような中国メーカーがすでに搭載していることも多くなってきました。
逆に言えば、このような中国メーカーは、ブランド力が強くないので、常にトガったテクノロジーを搭載していかないと、生き残っていけません。
事実、この2年ほどは、どのメーカーも5G対応以外のトガったテクノロジーに欠けるところがありました。すると2019年の中国市場シェアは、OPPO、vivo、小米、アップルとも20%前後落とし、ファーウェの一人勝ち状態になっています。文字通り、厳しいサバイバル戦を戦っています。
群雄割拠の中国スマホメーカー
中国のスマホメーカーは、この他にもたくさんあります。あまりに数が多すぎて混乱されている方も多いでしょう。
そこで、ここで整理をしておきます。分類の方法はいろいろあると思いますが、ここでは4つの系統に分類してみます。
1)ファーウェイ系
ファーウェイとそのサブブランドである栄耀(honor、オーナー)があります。
2)歩歩高系
OPPO、vivoに加え、一加(OnePlus)があります。「歩歩高」については、後ほど解説します。
3)小米系
小米の他に紅米(Redmi)のサブブランドがあります。
4)外資系
中国市場での外資系ブランドはアップルのみになりました。サムスンはほとんど売れていません。
ここで登場した「歩歩高」(ブーブーガオ)という社名と、その創業者である段永平(ドアン・ヨンピン)の名前をご存知の方は少ないと思います。
しかし、段永平はアリババのジャック・マーとほぼ同世代の起業家で、しかも、非常にユニークな成長手法をとってきた人です。
多くの中国人経営者が、自分の利益を重要視し独占しようとするのに対し、段永平は利益の多くを人に分かち与えてしまいます。やる気のある人、成果を出す人には可能な限りの利益と環境を与えることに腐心をし、多くの成功者を育ててきた中国テック業界のメンター的存在です。
OPPO、vivoもこのような段永平の支援の元に生まれてきたメーカーです。では、なぜそのような素晴らしい人物が今ひとつ有名ではないのでしょうか。
それは段永平は40歳の時に早々と経営者を引退して、現在はゴルフと投資三昧の日々を送っているからです。段永平にとって、事業で成功することは目的ではなく、あくまでも楽しい日々を送るための手段にすぎないのです。
今回は、この段永平という人物と、その後に続くいわゆる歩歩高系の企業をご紹介します。その来歴を知れば、「OPPOが安かろう悪かろうの格安中国スマホ」というイメージが違っていることがわかってくるはずです。