税収増が望めない理由
P8の「一般会計税収の推移」は多くの示唆に富んでいる。
日本経済は1990年度から減速を始め、1997年度からは縮小に入る。景気の過熱を止める最も効果な政策は利上げと増税だが、消費税が他の何よりも効果的だったことが見て取れる。
また、経済成長を促すものは労働人口と労働生産性、低利な資金の供給だと言えるが、このどれもが日本の成長を約束するものではなくなってきている。
人口減のなか労働参加率を高めることでの労働人口の維持はすでに限界的だ。また、労働生産性の向上に繋がる教育費、研究開発費などは減少が続いてきたために、競争力は先進国の中で最下位となっている。
また、あれほど強かった貿易でも黒字を出すのが困難になってきた。加えて、政策金利はマイナスで、資金供給も経済規模と同額になっており、これ以上低利な資金供給は望みにくいし、行っても税収増にはつながらない。
過去30年の日本の国際化は、言わば外国人が消費・投資しやすい日本に変えることだった。日本人を規制し、外国人を優遇することだった。それを利用して、日本人でも海外に法人を作り、「黒い眼の外人」として富を築いたものも多い。
2019年10月の消費増税で、日本の内需は成長をほぼ完全に止められ、インバウンド消費やカジノ構想などに象徴される、国内版外需が望みの綱となっていた。それがコロナで消えた。
そうした理由で、日本が経済成長を回復することは難しいのだが、それはアナログ的な発想で、デジタル経済では可能性がないとは言えない。新しい産業ができることも考えられるからだ。
ところが、P8の(参考グラフ)一般会計税収の推移に見られる日本の税制では、経済成長が続き企業収益が上がっても税収が増えにくいのだ。
なぜなら、「消費税は景気に中立な安定税源」だからだ。つまり、景気や企業収益がどん底で、国民が貧苦にあえいでいても税収はあまり落ちない代わりに、景気が拡大し企業収益がどんなに増えても税収はあまり増えないのだ。
また、どんなに引き上げても40兆円のギャップを埋める財源にはなり得ず、景気や他の税収への悪影響を考えれば、すでに限界を超えた高税率だと言うことだ。
そして、「1989年の税制改革」では、企業収益が増えても、所得税収、法人税収がそれほど増えないことになった。
つまり、累積財政赤字が決定的となるような「税制改悪」だったのだ。
個人にも打つ手はある
それでも、個人にも打つ手がある
支出が100兆円を超えていて、収入が60兆円を超えない、そしてP5の「普通国債残高以外にも借入金や地方債務残高などの長期債務が存在します。これらを国・地方の双方について集計した『国及び地方の長期債務残高』は、令和元年度末に1122兆円(対GDP比200%)に達する見込みです」という説明が意味することは、このままの税制では絶対に借金が返せないということだ。
つまり、「政府による約束は反故になる」可能性が高いということだ。年金、社会保障制度などが、現状の約束通りに運営できると信じることができる根拠がないのだ。
私はこんなこと、同じことを10年以上は言い続けているが、民主党の野田政権が消費増税を行った時、政治家に期待しても始まらないと痛感した。
何があっても驚かない。歴史を学べば、どの時代でも、そんなことは当たり前だったことが分かる。人はいつも束の間の夢を見続けてきたのだ。
とはいえ、今が過去のどの時代とも違って特徴的なのは、デジタル社会だということだ。世界で起きたことが瞬時に分かるということだ。
個人にも打つ手があることを忘れないでいたい。
※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2020年6月22日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。信済みバックナンバーもすぐ読めます。
『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2020年6月22日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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