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日本の農業をアメリカに売った政府の罪。アグリビジネスが農家の生活と地球を壊す=田中優

化学肥料が農作物を弱くする

この化学肥料に使われるのは、戦後の食料増産を目指した「緑の革命」以来で、それは多くの問題を起こしています。

過剰に散布された窒素は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素という形で水質を汚染し、飲料水などに多く含まれていると、血液の酸素運搬能力を阻害する「メトヘモグロビン血症」を引き起こして、海外では乳児が死亡した例もあります。人の健康を害するおそれがあることから、平成11年2月に水質環境基準健康項目に追加されるようになり、平成13年7月から水質汚濁防止法に基づく排水規制も実施されています。
※参考:硝酸性・亜硝酸性窒素による地下水の汚染について – 環境生活部環境局循環型社会推進課 – 北海道

それ以上に私が問題だと思うのは、化学肥料を与えすぎると植物が自分で容易に得られるため、根の周りを覆っている菌根圏の菌類に集めてもらわなくても根が自分で集められるようになり、「菌根圏を弱くしてしまう」ことです。

植物にとって、せっかく作った炭素などの栄養の半分を土壌微生物に与えていますが、それを「不必要だ」と感じ始めてしまうのです。すると根は、炭素や糖分を菌根菌に与えなくなり、結果的に土壌に炭素が蓄えられなくなりかねないのです。

土壌には木材の持つ炭素の5倍もの量の炭素が蓄積されています。それをしなくなれば、より土壌微生物はいなくなります。地球温暖化だけでなく、肥沃な土壌の劣化を招きます。これが怖いのです。

温暖化解決のキーマン「土壌と森林」が弱ってしまう

今の二酸化炭素排出の問題も、解決に向かわせてくれているのは「 土壌と森林 」です。

二酸化炭素の排出を削減できたら、次にしなければならないのは二酸化炭素の吸収です。そこに最も重要になるはずの「土壌と森林」が、先に壊されてしまうかも知れないのです。

そこから考えても「土壌と植物」を結び付けている菌根菌の存在は、最も重要な機能なのだと思います。

亜酸化窒素だけを減らしても解決しない

ただし、亜酸化窒素だけを排出しなくなっても、地球温暖化は解決できません。

出典:気象庁

出典:気象庁

現状の地球温暖化を進行させているガスは、75%までが二酸化炭素(上図では化石燃料由来と土壌改変や森林破壊などに分けて表示している)によって占められています。亜酸化窒素は全体の6.2%を占めるのみで、それ単独では温暖化防止はできないのです。

Next: 「慣行農法」が農家を苦しめる。なぜ日本政府はアメリカに従う?

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