世界は再公営化が主流。それでも日本は水道事業を民営化へ
2018年12月、改正水道法が成立しました。
この改正案は、自治体が公共インフラである上下水道などの施設を所有権したまま、運営権(通常15~20年)を民間企業に売却するという、民営化の一つの形である「コンセッション方式」の導入を促進する内容です。当メルマガでも、2度に渡って取り上げました。
ポイントは「コンセッション方式」です。
コンセッション方式は、災害時の水の安定供給の責任は自治体が負う、届けさえすれば厚生労働省の認可なしで企業が水道料金を変更できるという、民間企業にとってより都合がよい形にして、導入しやすくしたものです。
コンセッション方式を導入した自治体には地方債の元本一括返済の際に最大で利息の全額を免除するという改正PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律)も成立しています。
自治体にとっては、コンセッション方式を導入したら旨味があるというものです。
ただ世界の流れは「再公営化」で、2000年から2015年の間に、37か国235都市が、一度民営化した水道事業を再び公営に戻しています。
それは、民営化して不都合が生じたからです。民間企業に運営権を持たせたことによる料金高騰や水質悪化、サービスの低下などの問題が次々に出てきたからです。
まさに「貧乏人は水を飲むな」です。
「貧乏人は水を飲むな」が現実に
以前の記事をそのまま引用します。
マニラは1997年に水道事業を民営化しましたが、米ベクテル社などが参入すると水道料金は4~5倍になり、低所得者は水道の使用を禁じられました。またボリビアは1999年に水道事業を民営化したものの、やはりアメリカのベクテルが水道料金を一気に倍以上に引き上げ、耐えかねた住民たちは大規模デモを起こし、200人近い死傷者を出す紛争に発展しました。
当時のボリビア・コチャバンバ市の平均月収は100ドル程度で、ベクテル社は一気に月20ドルへと値上げしたのです。大規模デモは当時の政権側は武力で鎮圧されましたが、その後、コチャバンバ市はベクテルに契約解除を申し出ると、同社は違約金と賠償金を要求してきたそうです。
外資が参入してきて水道料金を引き上げ、水道料金が支払えない低所得者層は水が飲めずに、衛生上よくない水を飲んで病気になるケースがみられ、民間の水道事業者が利益ばかり追いかけたことにより、「再公営化」が世界の潮流となりつつあるという指摘もあります。
この外資企業と言われるのが「水メジャー」と呼ばれる企業で、2強と呼ばれるのがスエズ・エンバイロメント(フランスや中国、アルゼンチンに進出)とヴェオリア・エンバイロメント(中国、メキシコ、ドイツに進出)です。
いずれもフランスの企業です。
人間が生きていくうえで必要なのは「空気」と「水」だ。