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中国が「若者のクルマ離れ」を阻止。日本が学ぶべきZ世代向け戦略=牧野武文

自動車に関心を示し始めたZ世代

中国の自動車販売が復調をしています。世界的に同じ傾向が生まれていますが、コロナ禍により、公共交通を避けたいという気分が生まれ、個人や家族単位で移動ができる自動車に関心が集まっているからです。

もう1つの理由が新エネルギー車の売行きがようやく軌道に乗り始めたことです。新エネルギー車とは電気自動車(EV)とハイブリッド車、水素などの次世代エネルギー車の総称です。

といっても、軌道の高度は低く、これからいくつもの促進策を必要としていますが、最悪の状況は脱した感があります。中国工信部の目標によると、2019年は全体の8%、2020年は全体の10%の販売目標を設定していますが、2019年は4.6%で2020年も現状では4%を切っている状態です。とても目標を達することはできません。

販売量を見てみると、2017年、2018年は順調に増加をし、2019年前半はいよいよ新エネルギー車が本格的に売れ始める勢いが見えました。しかし、2019年後半で、前年割れどころか前々年割れすら起こしてしまったのです。

その理由は発火事故が連続したことでした。事故を起こした時にバッテリーから発火をするだけでなく、駐車場にただ停めていただけで発火をしたという事故も報道されました。数としては、スマートフォンの発火事故よりも少ない程度ですが、不安は大きく、買い控えが起きてしまったのです。

それが改善され、さらに満充電での航続距離も500kmクラスのEVが揃ってくるにつれ、新エネルギー車の販売に弾みがつき始めました。今年の前半は、コロナ禍によりディーラーにいくのも避けられたため、前々年割れという苦しい状況でしたが、夏頃から記録を更新するほどの売れ行きになっています。

ただし、これはあくまでも新エネルギー車のうちの乗用車のみで、さらに、販売目標は大きく下回っています。それでも、ようやく陽の目が見える段階まできました。

乗用車全体でも、昨年をわずかに下回っているものの、前年とほぼ同じ水準まで戻っています。

一時期は「若者のクルマ離れ」が深刻で、なおかつ新エネルギー車は売れないという二重苦により重苦しい空気が流れていましたが、例年並みの水準には復調をしています。

「若者のクルマ離れ」2つの要因

「若者のクルマ離れ」は、2つの要因で起きています。

<原因その1:若者の人口減少>

ひとつは若者の人口そのものが減少をしていることです。中国の人口ピラミッドはきわめていびつな形になっています。2015年まで行われていた子どもの数を制限する一人っ子政策が大きく影響をしています。

最も世代人口が多いのは30代前半で、全体の4.6%(男性)ですが、10代以下はどの世代も3.1%になっています。つまり、世代人口が7割以下になってしまうのです。当然、今後、製品の販売量は放っておいたら30%減にならざるを得ません。

逆に言うと、最も世代人口の多い30代前半、それについで多い40代後半から50代前半が中国経済の成長を牽引していました。このような人口の多い世代が、20代には車を買い、家を買い、子どもを産み、旅行にいくということで経済が成長する人口ボーナス効果が大きかったのです。

それが20代前半から下は世代人口が大きく減ります。これにより、若者をターゲットにした製品の売れ行きが苦しくなっています。10代、20代前半をターゲットにしたファストファッションがわかりやすい例で、Forever21は昨年中国から撤退をしました。ZARA、H&Mも業績が苦しくなっています。人気に陰りが見えたということもあるかもしれませんが、お客さんである若者の人数が減っていることも大きな要因です。

一方、ユニクロは好調を維持しています。ユニクロはもはや若者向けファッションではなく、中高年も利用する全世代型カジュアルウェアになっているからです。

若者に特化したビジネスでは、すでに世代人口減による影響が現れ始めています。自動車も若者だけのものではありませんが、若い世代が占める比率が高いため、世代人口減による影響が現れ始めていると言われています。

Next: 車に興味なし。「移動中にスマホを触れないなんて、ありえない」

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