<原因その2:環境を壊す自動車にまったく興味ナシ>
人口が減るだけでなく、若者が自動車そのものへの関心を失い始めています。大きな要因はスマホです。スマホを使いたいので、運転をすることができない。むしろ、公共交通機関を使いたい。自動車でしか移動できない場合でも、スマホからタクシー配車、ライドシェアが進んでいる中国では、スマホで簡単に車を呼ぶことができる。自分では所有せず、運転せず、バス、地下鉄、網約車(タクシー配車とライドシェア、ネットで予約する車の意味)を使いこなせばいい。
また、95后(95年以降生まれ=20代以下)はZ世代と呼ばれます。米国のマーケティングで、80年代生まれがX世代、80年代後半から90年代前半生まれがY世代、95年代後半以降生まれがZ世代と呼ばれ、それぞれ世代がそれぞれの特徴を持っているとされるものです。
中国では、80后とZ世代が特に注目をされ、それまでの伝統的な中国人とは異なる価値観を持っているとされています。詳しくは「vol.011:人口ボーナス消失とZ世代。経済縮小が始まる」で解説しています。
この世代の最大の特徴は、社会課題に大きな関心がある世代だということです。貧困や地球温暖化、人権といった地球規模の課題に大きな関心を持ち、個人により程度の差はあるものの、それを解消する行動をしようとします。
そういうZ世代から見ると、ガソリン車はもはやあり得ないツールなのです。ガソリン車よりはEVなどの新エネルギー車、新エネルギー車よりは自動運転車、MaaS(マース)に価値を見出します。
おそらく理想は、テンセントが深センで2027年に完成を予定しているネットシティのようなものでしょう。自動車と地下鉄は、地上と地下の階層を利用し、人は2階以上の階層を徒歩または自転車で移動します。オフィス、住居、商業施設がコンパクトに配置をされ、日々の生活は徒歩だけで完結するという新しいコンセプトの人口都市です。
このようなZ世代ですから、自動車を所有することには関心がありません。
Z世代がクルマを欲しがり始めた?
ところが「中国Z世代自動車購入傾向調査」(OPPO、J.D.POWER)によると、車を購入する計画を立てているZ世代は69.9%にものぼりました。もちろん、「2-3年以内に購入する計画を立てている」という回答は、現実的な計画があるというよりも「いつか買えたらいいな」という希望の表れにすぎないかもしれません。それを割り引いて考えても、Z世代は車の購入に関心を持っていると言っていい結果です。
これはいったいどういうことでしょうか? なぜ、車になんか興味のないはずのZ世代がここまで車に関心を持つようになったのでしょうか。
答えを先に言ってしまうと、自動車メーカー側が、Z世代を中心をした若者の嗜好を分析し、それに合わせた製品作りをしてきた成果です。
中年のおじさんが「車ってのはだな、こういうもので」と説教しながら、数十年前の流行を押し付けるということが自動車好きの間では起こりがちですが、それでは「若者の車離れ」を加速させるだけです。どのような車であれば受け入れてもらえるのか、それを自動車メーカーは模索をしています。
これは自動車だけではありません。あらゆる製品、商品がその努力をしなければならないのです。
そこで、今回は自動車を例に、どのようなZ世代向け努力がされているかをご紹介します。考え方は、他の製品、商品にも応用できるはずです。