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報道されぬ電力「容量市場」創設の狙い。老朽化した原子力施設に修繕費供給へ=原彰宏

再生可能エネルギーが電気市場のバランスを破壊?

容量市場とは、今までのスポット市場での卸電力市場で取引されている「電力量(kWh)」ではなく、「将来の供給力・容量(kW)」を取引する市場です。

「容量市場」は2020年7月に創設され、オークション方式の取引となっています。「スポット価格」は“使用電気量”に対してお金を支払いますが、「設備容量」は“電気を作る能力”に対してお金を支払うというものです。

2016年4月1日の、事業者間の競争をうながし、電気料金の抑制につなげることを狙いとして、電力小売全面自由化がスタートしました。

新規事業者の参入で、余った電力を売ったり、足りない電力を買ったりする電力の売買についても、ビジネスが活発化しています。

また、太陽光・風力発電といった再生可能エネルギーの拡大によって、再生可能エネルギー電源が市場に投入される時間帯においては市場価格が低下し、全電源にとって売電収入が低下することも考えられます。

ここまでは、市場原理の説明で理解できます。

太陽光発電と風力発電は、風や日照などで出力が変動する自然変動電源(VRE)と呼ばれ、燃料が不要のため、卸電力市場にほぼタダの電気として流れ込んできます。

そして、卸電力市場価格が大きく下がりました。電気の卸価格が安くなるのです。再生可能エネルギーは、一般物流で例えれば、生産コストがほとんどかからないので、販売価格が安く抑えられるのです。

それが先程のスポット価格を決める日本卸電力取引所(JEPX)での、売り手と買い手の価格バランス水準を、大きく引き下げました。

太陽光発電と風力発電は、風や日照などで出力が変動する自然変動電源(VRE)と呼ばれますが、このVREの急増は今後とも必須かつ不可避としながらも、VREを増やせば増やすほど、その調整力を維持することが難しくなると経済産業省は指摘しています。

その結果、天然ガスや火力発電など既存の調整電源は市場に参入できずに稼働率が下がるうえに、市場価格も下がる傾向になるとしています。

そして価格が下がると、新規の調整電源の投資が進まず、既存の電源の維持も懸念される事態になってきたというのです。

つまり、既存設備修繕や新規発電所建設のコストが賄えなくなるというのです。

政府の結論はいつも「原子力発電所が必要」

ここに、政府は「将来にわたる安定供給」という概念を押し出してきました。

電力供給量の内、再生可能エネルギーが占める割合が増えると、電力価格は安くなり、既存電力が維持できないというのです。

それは、老朽化した原子力発電所の修繕ができないということになります。

そうなると、異常気象や万が一の事故・トラブルによる広域停電など安定供給も懸念され、その解決策の1つが「容量市場」という論理です。

「容量市場」創設の理由

容量市場導入の大義名分は「将来にわたる電力の安定供給」です。この大命題のために「安定供給には多様な電源(発電所)を持つことが重要」として進められています。

さらに、電源の新規建設や改修を行うためには、長い期間が必要ですが、先行きの見通しが立たないと事業はなかなか進まず、この状態を放置すると電源への投資が適切に行われず、安定供給が損なわれ、それに伴う電気料金の高騰が起きる可能性があるとしています。

そして、価格が変動しやすくなるスポット価格ではなく、予め必要な供給力を確実に確保する手段を取っておこうということで、「容量市場」創設が必要だということになっています。

市場とは言いながらも、株式市場とか為替市場と言った金融市場の市場ではなく、単に、電力の価格を決める場所ということになります。あくまでもイメージですが、「市場」は「しじょう」ではなく「いちば」なのでしょうかね。

Next: 余分なコストは電気代を払う消費者が負担?

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