直近で株価が大きく上昇している半導体メーカー「ローム<6963>」について、その事業内容、今後の見通し、そして投資家としての注目点について詳しく解説していきます。なぜ今、ロームが注目されているのか、その背景には日経平均株価への採用という大きなニュースがありました。この採用は、ロームの株価にどのような影響を与え、また同社の事業はどのような特性を持っているのでしょうか?(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
ローム株価急上昇の背景:日経平均採用のインパクト
ロームの株価は、この2ヶ月ほどで大きく上昇しています。
その理由の1つとして、日経平均株価に採用されることが決まったことが挙げられます。具体的には、今年の6月20日にNTTデータが日経平均から除外され、その代わりにロームが補充されることが発表されました。NTTデータが親会社であるNTTの傘下に入り、上場廃止となる可能性が高まったため、その代替としてロームが選ばれた形です。

ローム<6963> 週足(SBI証券提供)
では、なぜ日経平均に組み込まれると株価が上昇するのでしょうか。
それは、日経平均に連動する投資信託やETFといったパッシブファンドが、自動的にロームの株式を買い入れるためです。これによりロームへの需要が増加し、さらにその需要を見越して、ファンド以外の投資家も先回りして購入する動きが見られたため、6月20日以前から株価はじわじわと上昇していました。
<日経平均採用銘柄の基準とは?ロームが選ばれた理由>
日経平均は日本の代表的な225銘柄で構成される指数であり、通常、日本を代表する企業が採用されるイメージがあります。しかし、ロームの今回の採用を見ると、その基準には意外な側面があることがわかります。
日経平均株価の構成銘柄選定基準は、主に以下の点が重視されています
- 市場流動性
- 流動性が低い銘柄の除外
- 上位75位以内の未採用銘柄の採用
- セクターバランスの考慮
過去5年間の売買代金と価格変動率(高値÷安値)を測定し、この数値が高い銘柄が候補企業として選ばれます。つまり、投資家から見てよく取引され、かつボラティリティが高い(株価が大きく動く)銘柄が選ばれやすい傾向にあります。横ばいや緩やかな上昇の銘柄は、数値的に不利になる可能性があります。これは、日経新聞が「投資家から見てよく取引される企業」を選定することを重視しているためと考えられます。
上記の計算に当てはまる銘柄の中でも、流動性が低いものは除外されます。
市場流動性順位が上位75位以内に入った未採用銘柄が日経平均に組み入れられます。これはかなりハードルが高い基準とされています。今回のロームはこの基準に該当して組み込まれたと見られています。
採用や除外の際には、日経平均全体のセクターバランスも考慮されます。今回のケースでは、NTTデータ(ITシステム)が除外され、ローム(半導体)が組み込まれましたが、実は日経平均のセクター分類では、NTTデータもロームも「技術」という同じセクターに分類されています。通信と精密機器という異なるビジネス特性を持つ企業が同じセクターに分類されるのは、日経平均のセクター分類が「ざっくり」している印象を与えます。
これらの基準を見ると、日経平均は必ずしも「日本を代表する企業」というよりは、「投資家がよく売買する(相場での人気がある)銘柄」を選定する傾向が強いと理解できます。
ちなみに、米国株のダウ平均株価(30銘柄)の採用基準は、日経平均よりもはるかに定性的な要素が多いです。例えば、米国経済への影響力、産業のバランス、持続的な成長性、企業の評判などが考慮され、「米国を代表する企業」という印象が強いとされています。直近ではインテルが除外され、NVIDIAが組み入れられるなど、時代の変化に合わせた象徴的な交代が行われています。
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