あなたは長期投資家でしょうか?もしそうであれば、ジェレミー・シーゲル教授の不朽の名著『株式投資』を読んだことがあるかもしれません。この本は、アメリカのビジネスウィークやワシントンポストでも「史上最高の投資書10冊」に選ばれるほど、長期投資、ひいては投資全体に関するエッセンスが凝縮された一冊です。
最新版である第6版も書店に並んでいますが、その内容は、時代を超えてアップデートされつつも、シーゲル教授が数字的な分析に基づいて導き出した株式投資の確固たる原則を提示しています。特に長期投資で成功するための完全なガイドとなっており、他の要素(例えばモメンタム)も調査した上で、それでもなお長期投資が優れていると結論付けている点が、その説得力を高めています。
この記事では、このシーゲル教授の『株式投資』から、長期投資の成功に不可欠な14の重要なエッセンスを厳選し、詳しく解説していきます。この動画を見れば、長期投資の本質を理解し、その実践に役立つはずです。ぜひ最後までお読みください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
実は超シンプル?長期投資の「成功法則」14選
1. なぜ長期投資なのか?:株式こそ最高の投資である理由
多くの人が長期投資が良いと言うけれど、その明確な理由を答えられる人は少ないかもしれません。シーゲル教授は、「安定した長期的な利益を求めるすべての人にとって、株式が最高の投資であり続けると確信する圧倒的な理由が存在している」と断言しています。その理由とは、普通株には「保有していると価値が増す」という性質があるためです。
実際に、株式・債券・金・銀といった様々な資産を長期的な視点(50年以上、80年、100年といった期間)で比較すると、株式が圧倒的に高いリターンをもたらしていることが分かります。短期的に見れば金などが優位に立つ時期もありますが、期間が長くなればなるほど、株式のリターンの高さは明らかになります。
2. 配当の絶大なる重要性:再投資が複利の力を最大化する
シーゲル教授の考える株式投資のミソは、ずばり「配当」にあります。S&P500やダウ平均といった指数でさえ、配当を再投資した場合としない場合では、長期的なリターンに比べ物にならないほどの差が生まれることが示されています。
資産を増やすためには、受け取った配当を使ってしまうのではなく、株式に再投資することが最も重要です。企業が成長すれば株価が伸びるだけでなく配当も増え、その増えた配当をさらに再投資することで、とんでもない複利効果が生まれるのです。これは、長期で株式を保有していれば「価値が増える」という性質を具体的な形で示しています。
3. 株式の期待リターン:年率6.7%という確かな数字
「保有しているだけで増える」とはいえ、具体的にどれくらいの期待リターンがあるのでしょうか?シーゲル教授の分析によれば、1870年から2021年までの150年間のデータに基づくと、実質的な長期リターンは年率6.7%という数字に収束するとされています。
この数字は、シーゲル教授が30年前に初めて本書を出版した際に示したリターンとまったく同じであると述べられています。株式市場には好不調の波がありますが、最終的にはこの6.7%という数字に落ち着く傾向があるのです。
さらに興味深いのは、この6.7%という数字が統計的な裏付けを持つことです。過去の株式市場の平均的なPERである14.8倍の逆数(利益÷株価=益回り)を計算すると、やはり約6.7%になるのです。これは、株式投資の真の利回りが、1株あたりの純利益がどれだけ生み出されるかに集約されることを示唆しています。預金金利と比べればはるかに高く、これは期待して良い目安となるでしょう。
4. 投資家の誤り:保有期間を過小評価する危険性
多くの投資家は、もっと早く成長する企業に投資しようとしがちですが、シーゲル教授はこれを投資家が犯す「最大の過ち」の一つと指摘しています。「保有期間を過小評価すること」とは、経済成長のスピードが速くても、それが必ずしも自動的に株主への大きなリターンに繋がるとは限らない、という事実を軽視することです。
いくら成長スピードの速い企業であっても、株価が高すぎれば意味がありません。その高い株価は、将来の成長を織り込みすぎた結果であり、成長スピードが落ちた時に「期待外れ」とみなされ、株価が下落するリスクがあります。レーザーテックの例が挙げられるように、いくら良い企業でも高値掴みはマイナスリターンにつながる可能性があり、年率6.7%の平均リターンを下回ることもあります。「素晴らしい会社といえど、あまりにも高すぎる値段で買うと素晴らしい投資ではない」のです。